弘美と純一の場合 vol.166. 裕子の…涙…。
「チョ、チョッと待って…ね、弘美…。で…、誰なの、そんな素敵な相談事してくれたって、その人…???」
「今回一緒にパリに行った取引先の会社の人…名前は加瀬礼子さん。彼女、凄い素敵な人よ~!」
「えっ…、今あんた、弘美…誰って言った???」
「加瀬さん…加瀬礼子さん。」
「ハァ~~そう…なんだ…へぇ~!」
「えっ…どうしたのお姉ぇ…、何…???」
「正に愛のキューピットね、その人!」
「はっ…???」
「実は…私もあんたに会わせたい人って言うのが…正にその人なのよ。」
「えっ、え~~???」
「そうなの、そう、その加瀬さんが、素敵な人なの。私もつい先日会っただけなんだけど…。じゃ、やっぱりあんたと一緒だったんだ。」
「うん、彼女のあの相談事がなかったら、ちょっと…ここまでは私、出来なかったと思う。それに、偶然も重なったからね~!えっ、じゃあ、お姉ぇももう加瀬さん、知ってるんじゃない。」
「そういう事…になるかな…。まぁ、私の場合はママ友からの情報からだったんだけどね…。」
「…って、事は…。…じゃあ、加瀬さんもあんたと彼の事はもう…???」
「うん、もう…知ってるわ。パリから帰って2日後には加瀬さんにも彼の事伝えた。もの凄く喜んでた。私よりも大袈裟な喜びようだったわ。」
「…で、彼…名前…何て言うの…???」
「藤崎…純一。」
「そっか~へぇ~良かった~!」
「ねね…、お姉ぇ…???どうしたの…???」
「…ごめんね…弘美…。つい…へへ…。」
裕子は、涙が滲み、思わず、傍にいる杏子を優しく…抱きしめた。
「ママ~どうして泣いちゃったの…???」
涙が頬を伝い、鼻声になって…、
「…ん~杏子~弘美おばちゃんねぇ…、ひょっとして…結婚しちゃうかもよ…。」
「ええ~パパみたいな人…出来るの~???」
「そうだよ~良かったね~!」
「うん。」
わずかに…パリから帰国して一週間の事だった。
その間にも既に弘美と純一の間では、頻繁に連絡が交わされ、
もう以前の弘美と純一ではなくなっていた。
純一にしてみれば、何を隠そう…、加瀬礼子に対して、
以前感じていたあの感情…、あの場面は、
憎しみからもはや…感謝に変わっていたのであった。