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弘美と純一の場合 vol.162. 何気ない仕草…。
3ヶ月前…。昼過ぎにパリ旅行から成田国際空港に到着した、
株式会社オリエンタルの社員は、各々荷物を手にした後、
ロビーでゲートから出て来る社員を待っていた。
そんな時にいち早くロビーに到着していた弘美が、
何げなく純一の肩に着いていた、
糸屑のような埃を優しく払ったシーンがあったのだ。
その時、純一も軽く弘美に合図をしたのだった。
何気ないこの仕草を加瀬礼子は見逃さなかった。
今まで一度も見た事のない、こんなシーンに、
礼子は弘美と純一の関係に確信したのだった。
周りの社員は全く意識すらもないその場面…。
確かに、旅行中の事を考えても弘美と純一の関係は、
礼子すらも、「まだ…かな…???」と言う感触でしかなかったのだが…。
礼子からしてみれば、「…いつの間に…???」と言う感じだったのである。
しかも、ロビーから各々が解散する場面でも、
弘美と純一の距離は離れているように…見えても、
何故かしら…近い感じになっていたのである。
「もしかして…。」