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弘美と純一の場合 vol.159. こら、佐也加…。
「あ~来た来た、先輩~!」
手を振っている佐也加を見て、
「あの子ったら…、まるで子供みたい。まだ時間前じゃない。」
エスカレーターで2階へ。佐也加の目の前に歩み寄ると、
「来た来た、ようこそお2人さん。」
「こら、佐也加…、その…お2人さん…と言うのはちょっと、勘弁してくれない…。」
「良いじゃない、来年の春にはもう2人共、結婚なんだから~!加瀬さん、もう中で待ってるよ。」
「そう、ありがと。」
ニッコリと笑って純一と一緒に部屋に向かう弘美。
そんな2人を見ながら…、
「いいなぁ~羨ましい…。どうしてこういう風になれるのかな…、全く…。まっいいか。」
独り言みたいに呟く佐也加に、
「こら、聞こえてるぞ。佐也加にだって、ちゃんと来るって。」
そう言いながら純一に「しょうもないわね…。」と言う顔をしながら…、
部屋のドアを開けると、いきなり礼子に抱きしめられた弘美であった。
弘美の誕生日である。9月のパリ旅行から3ヶ月経ち、
既に12月も半ばを過ぎていた。