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弘美と純一の場合 vol.157. 感触…。
ふとした状況が、弘美と純一に、
決定的なものを植え付けた数分であった。
しかも、その状況は周りの乗客の誰の目にも触れることなく…。
しかも、通常では有り得ない場所で起きたものだった。
けれども、その有り得ない場所で弘美と純一は、
それぞれの欲情をお互いに満たしたのだった。
お互いの吐息を感じ、そして女は官能する場所を全て愛撫され、
それを男は感じ、柔らかい肉体を愛したのだった。
弘美が感じたその感触は過去の哲也とのものとはまた異なる感触であり、
たどたどしい中でも、力強いものを感じた。
そして…純一の腕の中で、揺れる自分の体のままで、
薄らとではあるが、頬を伝わる熱いものも感じたのだった。
そして、こころの中ではもはや…「哲也」ではなく、
静かに何度も「純一…、純一…」と純一の名前を連呼しているのだった。
そして、ゆっくりと自分の体が満たされるのを感じたのだった。
そして…「こんな…40過ぎの私でも…。」
少し…熱いものが込み上げてくるのだった。