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弘美と純一の場合 vol.156. 仄かな灯りの下…。
気流のせいで機体が揺れはしたが、
特に機内ではそれほどの動揺はなく、平然としていた。
通路を行き交う乗客の姿はなく、凡そ10分は経過しただろうか、
化粧室から純一が出てきた。
その後、化粧室のドアには内側から鍵が掛けられ、
その後、更に2,3分後、今度は同じ化粧室から、
弘美が出てきて自分の席に落ち着いた。
機内のライトは化粧室に入った時と同様に薄い灯りの中、
多くの乗客は眠りに就いていた。
その中で、純一は少し疲れたままで…、
しかし…先ほど起きた行動に、心臓は高鳴ったままで、目を閉じれずにいた。
そして、仄かに香る自分の体にまとわりついていた、
弘美の香りをこのまま抱きしめ続けたいと感じていた。
弘美は一度化粧室で直したはずの化粧をもう一度確かめ、
更に、髪の乱れをもう一度確認。
少し赤らんだ顔が気になったが、
それでも、体に残る優しく撫でられた感触にまだ、
火照っていたのだった。