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弘美と純一の場合 vol.150. 夢…見てた。
「オイ藤崎、いつまで寝てんだよ、いい加減起きろよ、飯…行くぞ!」
昨夜、全く眠れなかった純一が、ようやく寝付いたのが、
辺りが白みがかってきたころであった。
同僚がカーテンを一気に開け放っても、
ブランケットの中…顔を埋めたままで…、
「もう…そんな…時間…???」
「何言ってんだよ、お前…何時に寝たんだよ!」
「…多分…さっきか…???」
「はぁ~???」
「全然眠れなかったから…。」
「おいおい…。」
「…ん…、谷屋…今何時…???」
「8時過ぎてるぞ。」
「…もう…。そっか…今日…パリ…最後なんだよな…。んん…夢…見てたよ。…誰だろ、あの人…、見た事ない…。でも…。」
純一が見た夢の中…、最後には浅川弘美と一緒にいるのだったが、
その前に、バスの中でずっと、自分と話をしている男性がいたのだ。
ただ、その男性は今まで一度も純一が逢った事もない男性であった。
…けれども、そんな一度も逢った事もない男性と和気藹々と話しているのだった。