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弘美と純一の場合 vol.149. パリがまた綺麗に見えた。
「私なんてね、な~んにも取り柄ってない女なんだけど…、パリに来て2人の凄さを実感しちゃった。浅川さんも加瀬さんも…。」
弘美も礼子も疑心暗鬼で顔を見合わせ、紀子を見る。
「だって、浅川さんはフランス語凄いし、加瀬さんもパリの街の歩き方…堂々としてるし、まるで二人とも、モデルみたいなんだもの…。私なんて…もう憧れちゃって…。そんな2人がいたからパリがまた綺麗に見えたの。凄い嬉しかったし、凄く楽しかった。ん~ん、私だけじゃない、みんなもそう感じてるんだよ。 だから…パリに来て良かったって…。」
そんな紀子の話を聞きながら…、礼子も弘美も…、
紀子を思いっ切り「可愛い」と思うのだった。
紀子の気持ちを聞きながらにして弘美は心の中で、
「良かった、この仕事を続けてきた甲斐があった。」
と実感するのであった。
礼子も紀子の右手を持って、握り締め、頭を撫でるのであった。
思い掛けない朝の爽やかで、少しだけ思い出深い朝食になり、
そろそろ最後のパリの朝の始まりであった。