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弘美と純一の場合 vol.28. 奇遇なるほどに…
そんな彼を、訪れた企業の通り掛かりのブースで、
一瞬見掛けたのである。
紛れもなく、先日の店での男性である。
すぐさま体に感じる衝撃。
小さなものではあるが、自分としても、
しっかりと確認されるほどの確かなもの…。
だからこそ「えっ、なんであの人がここにいる訳…???」
自分でも信じられない…、または、奇遇なるほどに、
2度目の偶然が重なり合っての…。
何事もなかったと言う思いを振り払いながら…、
そして取り繕いながら…。
…が、しかし、偶然であろうが、そうではないにしろ、
見てしまったものを、そして見えてしまったものを、
否定する事など出来はしない。
再び、心の底で、1枚の葉がたゆたっていたままで、
静かなままにいたはずが…、
辺りにわずかにうっすらとではあるが、
光りがぼやけながらも漂い始めるのであった。