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弘美と純一の場合 vol.145. 夢の中で…。
何がどうなっているのかさっぱり理解に苦しむ夢に、
誰にも自分が気付かれていないそのバスの、
意中の純一の席に近づき、純一の顔を窺うと、驚く事に、
今までの初心な純一の顔とは比べ物にならないほど、
男らしい表情に変っているのだった。
しかも、その隣にいる純一の同僚のはずが、
その座席には哲也が座っているのだった。
その哲也が純一と共に、楽しく話を交わしているのだった。
思わず「哲也、藤崎君。」と声を掛けるが2人に自分の声が聞こえないのか、
会話を続けている。
けれども、その会話もどうかしたのだろうか、
ゆっくりと純一がまず会話を止めて、
その視線は哲也から私の方へ向き、笑顔を。
そしてその次に今度は哲也がそんな純一の顔を見て、
そして私の方へ顔が向き、また笑顔で…。
そんな時にどこからともなく電子音が…。
弘美は夢の中から現実に引き戻されたのだった。
枕元のアラームが弘美の耳に響いていた。
そんな時…、何故かウトウトしていた純一も、
誰か男らしい男性と会話していたシーンを夢のような感じを覚えていた。