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弘美と純一の場合 vol.144. じゃあ私は…???
そして、その添乗員の裕子に礼子は、
大袈裟なゼスチャーをしてバスに乗り込むのだった。
「どうして裕子がここに…???それにどうして裕子が添乗員に…。添乗員は私…。」
不可解な状況に、裕子に近づき名前を呼んでも裕子には聞こえない。
それに裕子の右手を引っ張ろうとしても、すり抜けてしまう。
仕舞いには自分を置き去りにバスは発車してしまう。
けれどもそんな走り出したバスの中を外から様子を窺っているのだ。
そして気になりバスの中に身を乗り入れると、
バスの中に入れるのだ。
しかし、自分の事には誰も気付かない。
数時間前にお互いに視線を絡め合わせた純一すらも、
自分に気付いていない。
しかも…奇妙なのはそればかりでなく、
裕子が裕子ではなく、浅川弘美になっているのだった。
「えっ、そんな…じゃあ私は一体誰…???」
夢の中で不可思議に感じていると、間もなく、
礼子が裕子に近づき、
「浅川さん、藤崎君としあわせに。」
その一言を言って、後ろに座っている純一に、
「NI~CE」と言う合図をする。
すると純一もその合図に応えて合図をする。