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弘美と純一の場合 vol.143. 眠れない…、そして夢。
「眠れないのか…???」
「ああ…。」
「ちゃんと寝とけよ、明日は午前中、またフリーだからな。」
「ああ…。」
時計の針は既に午前3時を回っていた。
一度ベッドに入っていた純一だったが、何度も寝返りを打って…。
その度に弘美の会場での自分を見る笑顔を思い出し、
中々寝付けなかった。
思い出す度に胸がドキドキする。
そして、その度に自分の顔が赤くなるのを感じた。
「だめだ、こんなんじゃ眠れない。」
そう感じて、窓のカーテンを少し開けて、
同僚を起こさないように…パリの夜の景色を見続け…、
結局は未明に…単に、ウトウトとしただけだった。
それとは逆に、ひとりだけの部屋。
弘美はひとり静かに眠りに就いていた…。
そして…夢を見ていた。
初めは哲也とのオーストラリアでの夢であった。
海の上でクルージングをしている夢、それが夕方に変り夜に変り、
その夜が今度はさっきのムーラン・ルージュに変り、
何故かテーブルの向かいにいるはずの哲也を見ているはずなのに、
実際はその向こうにいる純一に視線を投げている…。
そして、その帰りのバスには何故か裕子が添乗員に…。