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弘美と純一の場合 vol.27. かつての面影…
間違いなく、その感触は、その昔、
哲也との出会いから男性としての感触と同じものとして、
弘美の過去の記憶が閃きとして、
何処かに隠れていたものが覗きかけていた。
そんな出来事も、単に通りすがりとは思いながらも、
しばらくは裕子と杏子との語らいの時間に、
終始視線を感じたのである。
しかも、その視線を斜め左肩で強く感じたのが間違いなく弘美であり、
その視線を確かめる事が出来たのが裕子なのである。
そんな裕子も、弘美に、何故かしらの異性の感覚を、
薄らとではあるが、感じられたに違いない。
それに、何よりも肝心なのが、見れば見るほどに、
名も知らぬその男性の容姿と言うものは、
かつての哲也に似通っている感じを覚えずにはいられなかったのである。