118/156
弘美と純一の場合 vol.134. それぞれのパリの街。
それぞれがそれぞれに、
自分たちの好きなようにパリの街を遊泳する。
ショッピングに講じるもの、とにかくパリの建物に見いだされるもの。
そして、ゆっくりとパリの街を足で散策するもの。
純一は「この旅行で何とか弘美との何か…。」を、
心の中では期待してはいたのだが、
単に時折社員に囲まれての弘美の笑顔を見る程度に止まっていた。
つまりは外国語を話せると言う人物は、
それだけで、ある程度周囲がその言語を話しているだけで、
普段はその言語を話していなくとも、
必然的に会話の内容も理解できるようになるのである。
当然、弘美の場合もそれと同様に、これまでの時間で、
体で浴びたフランス語が必然的に、
現地のフランス人ともわずかであるが会話が成立するようになっていた。
そんな弘美を若い女性社員が手放す事はなかったのである。
しかも、フランスの街をかつては経験のある礼子もまた、
今回の旅行の責任者の一人として…、
出来るだけ単独行動は控えていた。