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弘美と純一の場合 vol.127. 蒔かぬ種は生えぬ。
「そう…みたいね、私もびっくりしちゃった。…そんな風には全然みえなかったから…。」
礼子に藤崎の事を囁かれ、弘美も礼子にそう応えた。
正に「蒔かぬ種は生えぬ」のように…。
ふいに口から飛び出した弘美の言葉が発端で、
自分の知りたい事の一つが、極々自然に、
向こうの方から飛び込んできたのだから…。
そして、それに輪を掛けるように、礼子の言葉は続く。
「ふふ…。それにね浅川さん、面白いんだけど…、藤崎君、こういう所もあるのよ、年下の女性は恋愛対象にならない…。」
「えっ???そんな事…どうして…???」
「つまりは彼…、年上好みって事よ。」
「へぇ~信じられない…。ふ~ん、そういう事も…あるのね…。」
「つまり…そういう事よ。」
そう言いながら、目の前で記念写真に一緒に入ってと、
若い女性社員から手を振られて、礼子はそれに応えて弘美から離れる。
そんな場面を微笑みながら見ていると、思わず…、
「早く~浅川さんも一緒~早く、早く~」