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弘美と純一の場合 vol.126. 七不思議…。
さっきの弘美からの声掛けでドキンとした胸が、
未だに純一の中でドキドキと高鳴っていた。
そして、その胸の高まりと同時に、
弘美のあの優しい微笑みが純一の頭の中を駆け巡っていた。
ふいに掛けられた話のあまりにも唐突であり、
そして、その唐突な声が純一のこころを占拠していた。
ある意味では、それだけでもう純一の体はいっぱい、いっぱいになっていた。
「おい藤崎、何ボーッとしてんだよ、世界遺産にお前…、心…乗っ取られたか???」
同僚に肩を叩かれ、思わず、我に返った純一、
その同僚の言葉を聞いて、周囲にひと時、笑いの渦が発生した。
弘美もクスクスと笑いながら、そして頭の中で…、
「良かった、ラッキーだ。」
心の中にあった引っ掛かりが一瞬に解かれた…、
そんな感じがしたのであった。
ゆっくりと夜の世界遺産を巡りながら…、
純一に気付かれないように…礼子が…、
「不思議でしょう~藤崎君、あんなに格好いいのに、未だに彼女なし。我が社の七不思議の一つよ。」