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弘美と純一の場合 vol.26. 静かなる波紋…
逆に言えば、その長期間に、
男性との接触がなかった事の事実が…、
「今後は男性との接触はないもの…」と、
必然的に、弘美自身の体が、そういう風にさせていたのかも知れない。
そんな長い期間の凪もない水面にも静かな期間を経て…今、
その水面に、何処からともなく、迷い着いた一枚の葉が、
まるで目の見えない誰かに…選ばれたように、
静かに波紋を広げたのである。
静かなる波紋ではあったが、それはやがて、
弘美の後々にまた様々な境遇を与えるに相応しい、
波紋の始まりだったのである。
両の肩に触れた両の手、
偶然ではあったが、何故かしら…懐かしい感触を、
感じさせるには、十分な感触であったからに他ならない。
間違いなく、最初の衝撃はあった…。
この長い期間に感じ得られなかった…異性との接触。
それ故に、「今…何が起こったの…???」と言うのが、
直感的に脳裏に過ったのである。