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弘美と純一の場合 vol.125. 夜景の中で…。
自分でも思いがけない言葉を、
口に出したものだと弘美自身、感じていた。
いつのまにか偶然にも、
自分の右前に、藤崎純一の姿が流れてきたのである。
全く違和感のない流れの元で…。
加瀬礼子が自分の左横にいたのには知っていたのだった。
例え、礼子からあの夜、相談事を持ち寄られたとしても、
まさか本当に藤崎とその相談事が合致しているかと言うのは、
想像に過ぎなかったのである。
けれども、今、現実に、弘美としては、
藤崎には彼女はいないと言う事が、はっきりと分かったのである。
それだけでも、弘美の体の中では安堵感が占拠する方向に入っていた。
それと同時にこの目の前に存在している、
世界遺産の夜景にも感謝したい思いでいっぱいであった。
今は弘美の少し左後ろで礼子も…、
コチラも夜景に魅せられながらも、「これでこのふたりも…。」
そんな風に感じながら、少しだけの発展性に、
こころ和ませてはいたのだった。
そして、意中となっている当の藤崎も…。