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弘美と純一の場合 vol.123. 「いつか、彼女と一緒に…、」
夕方や夜の東京の林立するビルやホテルから見る夕景や夜景とは異なり、
自然の中に佇むモンサンミシェルのその夕景…、
いや、もはや時間的には夜景に近づいており、
その醍醐味は正に世界遺産。
ふいに、自分でも自然なままに、
自分の前をひとりで歩く藤崎純一に、
「どう、藤崎さん、この景色…???」
モンサンミシェルの景色が弘美の口を開かせたように…。
純一もこの旅行で初めて自分に声を掛けられたみたいで、
一瞬、ドキンとしたが、その声の主に対して、振り向いた時、
弘美の優しそうな微笑みに一言…、
「良いですね。生まれて初めてこういうのって、見たような気がします。」
「そうよね~素敵よね~!」
そんな風に言いながらも、周りの社員にも気を配って、
「いつか、彼女と一緒に、また来れればね…???」
ふと、その言葉に、純一は、「えっ…???」と、思ったが、
純一も純一で、周りを意識して…、
「ハハハ…、…ですね。」と、照れ臭そうに…。
そんな時に、弘美の耳に入って来た言葉が、
「浅川さん、浅川さん、藤崎君…まだ彼女いないわよ。」