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弘美と純一の場合 vol.119. 微かな予感を頼りに…。
そんな中、若い女性社員たちと一緒の中で…、
ふと弘美の頭に過ったのが、
かつて哲也と一緒に訪れた新婚旅行先がオーストラリアであった。
英語が堪能な弘美は、夜のオーストラリアの街、
女性ながらにファッショナブルな洋服や化粧品を求めて、
哲也を共にショッピングに講じたものだった。
哲也と言えば趣味のヨット、
現地でチャーターして弘美を連れてクルージング、
弘美にすれば、初めての経験を味わったものだった。
そんな過去を思い出しながら…。
でも、今は、この同じパリの下、
同じホテルの中に藤崎純一がいる。
確かに、まだ一度も相対した訳ではなかったが、
微かな予感を頼りにするだけでも、弘美の気持ちの中では、
穏やかな感覚が漂うのであった。
まだまだ夜はこれからなのではあるが、
翌日から観光を含めて、動き回る事が多い一週間である。
数件の大小の店を回り、
ちょっとした飲食店も味わい、その後ホテルへ。
弘美は若い女性社員をエレベーターまで見送って、
少しの間、ロビーに落ち着いた。