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弘美と純一の場合 vol.118. 甘いムード漂うパリの夜
将来は客室乗務員と言う仕事に就きたい。
そんな夢を持ち、中学から勉強した英語は高校でも同じく、
そして、大学では中国とフランス語を勉強し、
普段の会話くらいのフランス語は話せる弘美であった。
日本語とは全く異なるその国の情緒ある言葉が、
店に入っても、道路を歩いていても自然と聞こえてくる。
そして東京の夜とは違い、何故かしら甘いムードが漂う、
パリの街を少しの時間でも肌で感じられると言うのは、
この仕事をしていて、良かったと言う実感でもあったのだった。
そういう意味でも、若い女性社員からは、
人気となってしまった弘美のパリの初日の夜でもあったのだ。
フランス語が少しでも話せると言う女性が、
女性社員としてはどれだけ頼りになるか、
海外旅行の場合、同行していれば、
喉から手が出るくらいに「旅のお供」的な、
存在になり始めていたのだった。
ただ、そんな中で、弘美自身も彼女たちと一緒にいて、
久し振りの海外での、しかも、英語とは違ったイントネーションの外国語を、
少し、体で浴びたい気分にもなっていた。