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弘美と純一の場合 vol.117. ホテルにて…。
数分もすれば、社員の誰一人として、
ロビー周辺にその存在はなくなるのである。
ただ、弘美だけは、現地のガイドと暫時、
明日の打ち合わせなどのために時間を過ごし、部屋へ向かった。
久し振りのパリである、願うなら、自分の傍に誰かがいて、
一緒にパリの街を遊泳したいと言うのが本音ではあるのだ。
だが、今回は仕事で…、と言うキッパリとした感覚で、
自分の甘えには蓋をしてのこれからの一週間となるのである。
部屋で荷物を整理しただけで、そのままホテルのロビーに戻る。
既にロビーでは若い女性社員が弘美を待っていたのである。
つまりは添乗員であるからが故の、
これからの弘美の仕事が始まるのである。
若い女性からしてみれば、添乗員であるからこそ、
海外であろうが、それなりに旅行的な知識は持ち合わせている。
全くパリの右も左も分からない観光客であればこそ…、
しかも、それが容姿端麗がしっかりと備わっている弘美であれば、
女性社員にとっても、フレンドリーになりたいのは道理なのである。