友人の親
また日間ジャンル別100位圏外になってしまった・・・。
どうすれば再浮上出来るやろか。レビューとか、誰か書いてくれへんか・・・(虫の息)
ジュワジュワと良い音を立ててなるハンバーグ。香ばしい香り。いつもより空腹気味だったお腹に効果抜群な香りだったのに、気付けば空腹なんて吹き飛んでいた。
「美香。誰か来てるの?」
玄関から聞こえてきた女性の声。初めその声の主は、ただいまと言った。それはつまり、この声の主がこの家に住む人であることを示していて、つまりは吉田さんの家族であることを意味していた。
「美香ー?」
あわあわする僕に、吉田さんはとても落ち着いた顔をしていた。さっきまでのお返しだとばかりに、むしろとても楽しそうにしているのは気のせいだろうか。
「何、お母さん」
吉田さんの声が、嬉々としていることはすぐにわかった。お母さん。なるほど。
「なあに、あんたご飯作ったの? いつもしないのに、珍しい」
「そ、それは今はいいじゃない」
ほぼ答え合わせを、吉田さんの母がしてくれた。
アハハと僕は苦笑した。
しかし、苦笑しているような場合ではなかったことは、リビングの扉が開いてすぐに思い出した。
「……あら」
吉田さんのお母さんと、目が合った。
僕は吉田さんの嘘に微笑み、緩みかけていた気持ちが一気に引き締まった。額に伝う汗が、とても冷たかった。
唸りながら、吉田さんのお母さんは僕に近寄った。目を細めて、首を傾げて、何やら思い出そうとしているように見えるのは気のせいか。
ただそんな観察している余裕をあっても、口を挟む余裕はなかった。止まらない冷や汗を拭う動作すら行うことが出来なかった。
「……あなた」
吉田さんのお母さんが、口を開いた。このまま取って食われてしまうのだろうか。愛娘に手を出したろくでなしとして、吊るしあげられるのだろうか。勿論そんな気は僕にはなかったが、第三者から見たらそう見えないのは明白だった。
断罪される。
僕は逃げる心の準備を始めていた。
「遠藤久人君じゃないっ」
しかしそんなことを考えていた僕を拍子抜けさせる言葉を、吉田さんのお母さんが言った。
何故、フルネーム。吉田さんのお母さんと出会ったことは、これまで一度だってなかった。なのに顔を見ただけで早々と気付かれるのは……一体、何故なんだ。
「すっかり大きくなったわねー。でもそうよね。思えばあなた、美香と同い年だもんね」
「えっと、どこかで会ったことありましたっけ、僕達」
「え……」
勇気を出して尋ねたら、とても驚かれた。どうやら出会ったことがあるらしい。
「ああ、違うわ。違う。あなたと会ったことはこれまでない」
と思ったが、吉田さんのお母さんは苦笑しながら手を振った。なんだか、吉田さんのお母さんは中々ひょうきんな人に見えるのは気のせいだろうか。少なくとも、初対面だった頃の吉田さんよりは話しやすい。まああの時と今で、僕の性格もかなり変わった気もするし……。
「あなたが出たジュニアコンクールに、たまにあたしも出向く機会があったのよー」
「ああ、なるほど」
確かに、一時は大会荒らしだなんだと周囲に煙たがられた時期がある。別に、どの大会に出ようが参加費を出していないわけではないのだから、関係ないだろとかつてから思っていた。そもそも入賞を逃したのは僕のせいではなく、子供の実力不足、ひいては努力不足だろうに。
「まあそんなわけで、あなたのことは良く知っているわー。何せあなたのトランペットに執心した人が家族にいたからね。その人のせいで、本当子供の頃は……色んなコンサートホールを回ったわ」
ニンマリと微笑む吉田さんのお母さんに、僕は首を傾げた。
「お、お母さん。余計なこと言わないでもらえる?」
「余計なことなことはないでしょ」
「そうだよ。吉田さん、それだと当事者みたいに聞こえるよ」
アハハ、と笑うと吉田さんは僕に顔を見せないように俯いていた。微かに笑うような声色が聞こえた。
「で、そんな遠藤君がウチに何か用?」
一先ず存在を知られているならば、少し話が早い気がした。そう言う吉田さんのお母さんに、僕は言葉を発そうとして……。
「期待していいの? いいのよね?」
食い気味な吉田さんのお母さんに、一歩後ずさった。
「もう。びっくり。まさかあの美香が男の子を家に連れてくるだなんて、もうもうもう。本当びっくりー。どっちから? どっちから?」
「……えぇと」
「お母さん、遠藤君困っているから」
さっきも不貞腐れてなく。
いつもよりもお淑やかではなく。
まだ知らない声色で、吉田さんは言った。顔は何故か、真っ赤だった。
ふと、ハンバーグの加熱がそろそろ十分な頃だと思ったので、僕は火を止めた。
「でもでも、親の立場としてはとても気になるじゃない?」
「何もないから。遠藤君とは」
「何も? 本当に、一切何も?」
「……まだ、何も」
「そう。まだなんだ。まだ何もないんだー」
吉田さんが怒ったことは、数か月の付き合いの僕でもわかった。
「いつまでそこにいるのよ。さっさと着替えてきなさいよ」
「いやー、こわーい。遠藤君、こんなウチの娘だけど、今度ともによろしくね」
「あ、はい」
「遠藤君、夕飯も食べてくから」
「あらー、そう。だから二人で料理してたのねー」
「早く、着替えてきてよ」
「はいはい。じゃあまた後で」
嵐のように騒がしい吉田さんのお母さんがリビングを後にした。
「ごめんね」
「いや、まあ……。強烈なお母さんだね」
「……ごめんね」
吉田さんは疲労が溜まっているのか、大きなため息を吐いた。
親公認。はい勝利!
吉田さんがかつてから主人公のファンだったは設定としてあった。この章でグンと距離が縮んでしまったな。でも主人公、ポンのコツなんだよな。
評価、ブクマ、感想宜しくお願いします。




