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テランスは考える2(テランス視点)

 マッケンジー卿との面会の約束を取りつけようとしたのだけれど、彼は不在で返事を得ることができなかった。

 聞けばガザード公爵家の姉弟の襲撃があり、二人が無事かの確認に向かったらしい。

 襲撃と聞いた時には驚いたけれど、オレイアに探らせたところウィレミナ嬢もナイジェル様も無事なようで私は胸を撫で下ろした。後でウィレミナ嬢が好みそうな菓子でも持って、見舞いに行こう。


(しかし、ガザード公爵家の姉弟を襲撃だって? そんな危ない橋を渡る人間がいたなんて――)


 ガザード公爵は犯人を追うだろう。そして――黒幕を見つければ、その一族郎党に苛烈な報復を加えるに違いない。公爵は、自身に敵対するものに決して容赦はしないのだから。


(ガザード公爵家を恐れない家なんて、この国に存在するのか? 当然、王家を除いての話だけれど)


 ――まさか、王家の誰かが?


 一瞬過ぎった考えに、私は眉根を寄せる。そしてふるふると首を横に振った。

 ガザード公爵家との蜜月期である王家に、そんなことをする理由はない。要らぬ内乱の種を生むようなことはしないだろう。


「なにか、理由があれば別なのだろうけど……」

「なにをぶつぶつ言ってるんですか、テランス様」


 目の前の机にことりと紅茶が置かれる。見上げると、オレイアが胡乱げな目でこちらを見下ろしていた。

 幼い頃から一緒にいる彼は、悪感情をまったく隠さない。僕は彼のそんなところが気に入っているのだけれど……他家なら即座にクビだろう。


「僕の可愛い婚約者が、どこの誰に襲われたのかを考えていたんだ」

「それなんですけれど……先ほど妙な情報を仕入れまして」


 オレイアはそう言うと、柳眉を顰めた。その言葉を聞いて好奇心が疼いた僕は、ぐいと身を乗り出す。


「妙なって?」

「そう前のめりにならないでくださいよ。……襲撃者たちが、牢で毒殺されたそうです。そして、その毒殺の犯人も見つからないそうで」

「へぇ……それはすごいね」


 ガザード公爵家の姉弟の襲撃犯たちだ。それはそれは、厳重に管理されていたに違いない。

 その隙を衝いて毒殺できるような者なんて、数が限られているだろう。ふつうならば容易に見つかるはずの、その実行犯が見つからないとなると――


(王家の誰かという線が、一気に濃厚になってきたな)


 そんな芸当、王家かガザード公爵家くらいにしかできないだろう。そして今回の場合、ガザード公爵家は確実な白だ。

 しかし……『なぜ』。

 現在の情勢に思考を巡らせる。

 ガザード公爵家の者を殺して、得をする王家の人間はいないように思えるのだが。

 いや。『ガザード公爵家』の者なのか、怪しい人物が一人いる。

 その人物の本当の出自が、今回の襲撃の原因ならば――


「……暗殺者は、ナイジェル様を狙ったのかな」

「ナイジェル様が狙われる理由なんてありますかね。彼をガザード公爵家の跡継ぎに……なんて話が出ているわけでもなし」


 オレイアが、流麗な仕草で茶菓子を用意しながら言う。私が噂好きだと責めるように言うくせに、オレイアもなかなかの噂好きだと思う。


 想像の翼が飛び――とある形を結ぶ。


「ふむ、面白いね」

「テランス様。面倒なことに首を突っ込まないでくださいよ」


 私の言葉を聞いたオレイアは、不快そうに言うと口元を曲げた

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