義姉は義弟におねだりをされる7
……眩しい。
瞼に明るい光を感じる。もう、朝なのかしら。
昨夜は仲直りをした後ナイジェルの部屋でお話をして……それからわたくし、どうしたのだっけ。
「姉様、起きたのですか?」
頭を優しく撫でられ、瞼を上げる。するとそこには――ナイジェルの姿があった。
朝の光に照らされた彼はまるで宗教画の天使のようだ。彼は絶世の美貌に甘い笑みを浮かべ、横になって頬杖をつきながらわたくしの頭を撫で続けている。
義弟は朝から見ても綺麗ね。寝起きのせいなのか少し髪が乱れているけど、そんなところもだらしなくは見えず色香が増すだけだ。首にはわたくしが贈った指輪の鎖が煌めいていて、指輪本体は服の中に隠れてその姿が見えない。手を伸ばして鎖を手繰ると、指輪はきちんとそこにあった。
「姉様。どうしたのです?」
「指輪が、あるか。少し、気に……」
語尾は眠気でとろとろと萎んでいく。
「ええ、当然失くしたりしませんよ」
ナイジェルは微笑むとまたわたくしの頭をまた撫でた。
その心地良さに、再び微睡もうとして……
「……ん?」
この状況の異常さに、ようやく気づいた。
周囲にちらりと目を向けると自分の寝室ではない。ここは……ナイジェルの部屋?
「ないじぇう」
ああ、ダメだわ。寝起きで舌が回っていない。
「はい」
「ここは、お前の部屋?」
「はい。お話をしている最中に姉様が眠ってしまったので、私の寝台に寝かせました」
――なんてことなの。
一気に意識が覚醒し、思考がぐるぐると回転をはじめる。
「ナナナ、ナイジェルッ」
「どうされました? 姉様。弟の寝台で寝ることが……そんなにまずいことだったでしょうか」
ナイジェルは無邪気な表情で首を傾げるので、言葉に詰まってしまう。
「安心してください、僕は長椅子で睡眠を取りましたので。昨日姉様に一緒に寝るのはダメだと言われましたものね」
ならどうして今隣で寝ているのよ、という疑問はぐっと飲み込む。
突付いたら藪蛇になりそうなことは、そのままにしておいた方がいいのだ。
追求して『実は一晩一緒に寝ました』なんて言われる方が困るもの。
……なににしても、無防備なところを見られてしまったのよね。
「……ナイジェル」
「なんですか? 姉様」
「……寝顔を見たの?」
「まぁ、寝台まで運びましたので。見ましたね」
きっぱりと言われて羞恥で顔が真っ赤になる。今もこうして寝起きの顔を見られているのよね……!
「わ、忘れなさい!」
枕を手に取りぼふりとナイジェルの顔に軽くぶつけ、わたくしは寝台を下りた。
義弟の前では……隙を見せてばかりな気がするわ。
これからは気を引き締めて、義弟の前でも常に公爵令嬢らしくあることを心がけないと。
「……あんな可愛い寝顔、忘れられないです」
ナイジェルのそんな言葉が聞こえた気がしたけれど……気のせい、ということにしておきたいわ。
じわっと囲い込む弟(´・ω・`)
面白いと思って頂けましたら、感想・評価などで応援頂けますと更新の励みになります(*´ω`*)




