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義弟との再会1

 学園への入学も明日に迫り。なのに一向に決まらない『護衛騎士』にやきもきとしていたわたくしは、お父様の執務室に呼び出された。


「ウィレミナ、護衛騎士が決まったよ」


 開口一番発せられたその言葉に心底の安堵を覚える。わたくしの身分で学園で護衛もなしに歩くのは、襲ってくれと言っているようなものだ。


「安心、しましたわ」


 胸に手を当てて息を吐くわたくしに、お父様は微笑みながら頷いてみせる。もう、そんな呑気なお顔をして!


「選別にずいぶんと時間がかかってしまって、すまないね」

「本当ですわ、お父様。わたくし護衛もなしに学園に入るのかと、不安になっておりましたのよ!」


 我が家の家格だと人選に時間がかかるのは理解できる。だけどここまで引っ張るのは、やっぱり異常だ。本当に不安でいっぱいだったのよ!


「……不安な気持ちにさせてすまなかった」


 眉尻を下げてそう言われてしまうと、わたくしはそれ以上なにも言えなくなる。お父様はずるいわ。


「彼が本当に君を守れるのか。マッケンジー卿からのお墨付きが出るまで、ここまで時間がかかってしまってね」


 彼? マッケンジー卿?

 わたくしの護衛騎士はマッケンジー卿の部下なのかしら。ならば時間がかかったことにも、多少の納得はできる。マッケンジー卿は完璧主義者だ。自分の責任で部下を送り出す際には、入念な確認をすることを怠らないだろう。


「……マッケンジー卿自身が、護衛になってくださっても良かったのに」


 思わずそんな言葉を漏らすと、お父様は少し目を丸くした後にくすくすと笑った。


「そんな話も出ていたんだよ? だけど『彼』がどうしても君の護衛になりたいと言ってね。マッケンジー卿のお墨付きが出れば彼が、足りないと判断されたらマッケンジー卿が君の護衛になる予定だったんだ」


 ……なんてことなの。

 誰よ、マッケンジー卿と四六時中一緒に過ごす機会を潰したのは!

 だけどお墨付きが出るってことは、相当な手練なのよね。悔しいけれどその方で納得しないといけないわ。ものすごく、悔しいけれど!


「それで、その『彼』は?」

「うん、もう来ているよ。入っておいで」


 お父様が執務室と続きになっている部屋に、明るい調子で声をかける。

 なんだか気軽な雰囲気ね。もしかして、お父様も親しい方なのかしら。


「……はい」


 扉が開け放たれている隣室から――声が響いた。

 低くて男らしく、そして澄んだ声音だ。なぜかその声が懐かしいように感じて、ひどい胸騒ぎがした。

 わたくしの居る場所からは『彼』の姿は見えない。

 執務室に近づいてくるコツコツと低い足音。それはなぜか……不安と恐怖をかき立てる。


 そして『彼』はわたくしの前に現れた。

 以前より美しく、そして男らしい姿になった――わたくしの義弟『ナイジェル・ガザード』が。


「どうして、お前がわたくしの護衛に……」


 掠れた声が唇から零れる。

 ナイジェルは身を震わせるこちらの様子には構わず大股で近づいてくると、わたくしの手を取った。


「ウィレミナ姉様。お久しぶりでございます」

そんなこんなで冒頭に戻るのです。

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