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浮かれる義弟とその課題2(ナイジェル視点)

 姉様に許可を取った私は、学園を出て目的地へと向かった。

 向かった先は――ガザード公爵の屋敷だ。

『これから』のことの確認と、姉様へ……素性を明かして求婚をしていいかを訊かなければ。いや、求婚は早すぎるか? まずは気持ちを改めて告げることの方が大切だ。そして、姉様のお気持ちもきちんとたしかめねば。

 自惚れでなければ……好かれているとは思うのだ。

 姉様は好意のない相手に、過剰な接触を許すような人ではない。ただ身内には甘い人でもあるので、私に対して『義弟』としての愛情しかないという可能性もあるにはある。

 そうだとしても――お気持ちを手に入れるために努力をするつもりだが。そして、逃がすつもりもない。

 姉様は私がはじめて愛した、そして人生の最後まで愛する人だ。姉様以外の選択肢なんてありえない。

 そんなことを考えながら馬車に揺られていると、学園のある街は遠ざかり王都へと近づいていく。王都にはエメリナ様との社交の関係で時々行っていたが……公爵家へ帰るのは久しぶりだ。

 馬車が屋敷の前にわずかに軋みながら停まる。

 ガザード公爵は、私の話にどんな反応を見せるのだろうか。

 少しの緊張を押し殺しながら、私は馬車を降りて屋敷の門へと向かった。

 私の顔を見た門兵は、こちらに会釈をしてから道を開ける。

 懐かしの我が家の門を潜り姉様と過ごした思い出のある庭を抜けようとすれば、甘い香りがふわりと漂う。そちらを見ると、可憐な白い花が絨毯のように咲いていた。

 花は姉様が好きだったものだ。名前はなんといったか。草花に興味がない私は、花の名前など聞いてもすぐに忘れてしまう。何度も、姉様に教えていただいたのにな。

 帰りに……摘む許可を得られるといいな。姉様への手土産にしたい。きっと喜んでくださるだろう。


「お帰りなさいませ、ナイジェル様」


 昔よりも皺が増えた執事に出迎えられ、屋敷の中へと導かれる。

 屋敷には懐かしいものばかりがあり、ここが私の『家』なのだと……ふとそんなことを感じた。父と母と暮らした頃の記憶は、今は遠い彼方だ。


「お父様はどちらに?」

「執務室でお待ちです」

「そうか。先触れは出していたが、すぐにお会いになれるかな」

「はい。ナイジェル様が来るのを、楽しみにされていましたよ」

「楽しみに……ね」


 あの人は、私の用件におおよその察しがついているだろう。

 どういう意味で『楽しみ』にしているのか、不安なところではある。

 長い廊下を進み、重厚な執務室の扉の前へとたどり着く。

 軽くノックをして訪いを告げると、「入りなさい」という軽やかな声が内側から響いた。

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