2、森の中のスライム
塔から抜け出すのは簡単だった。
部屋の窓の鉄格子が老朽化してたやすく壊れたからだ。
「この格好じゃ目立つわね」
レイシアはそう言うと、洗濯部屋から女物と男物の服を上下持ってきた。
翔は腰のベルトに、伝説のヒノキの棒を下げた。
「ちょっと、それかしてもらえる? 」
「はい、どうぞ」
レイシアが伝説のヒノキの棒を持つと、とてつもなく重かった。
「ちょっと、すごい重いんですけど」
「そんなこと無いですよ、普通の棒ですよ」
翔はそう言ってレイシアから伝説のヒノキの棒を受け取ると、ひゅんひゅんと振り回した。
レイシアと翔は、城から森に逃げ出すことに成功した。
ミシェルがあまりに騒ぐから、一応塔に幽閉という形をとっていた。
けれども、だれもレイシアを疑っていなかった。
「ウィンディ城は遠いんですか? 」
翔が聞くとレイシアは首を振った。
「森を抜けてすぐのところよ。森にはスライムが出るから気をつけて」
そう言った矢先にスライムの大群と鉢合わせした。
レイシアは翔を見た。翔はヒノキの棒で応戦している。
しばらくするとステータス表示がでた。
銅の剣 LV1
攻撃:20
魔法:30
特殊効果:なし
「何それ? ヒノキの棒が銅の剣に変わってるし、剣のレベルが上がってるんですけど」
「俺に聞かれてもわからないですよ」
レイシアは翔の言葉に引き下がった。
スライムたちを倒すと、すぐに森をぬけることができた。
翔は銅の剣を腰のベルトに差し戻した。
「レイシアさん、あのお城がウィンディ城ですか? 」
「ええ、そうよ」
レイシアは颯爽と歩いて行った。
慌てて翔はその後を追いかける。
こうして二人の冒険が始まった。