9.シスター・リリエルの望むモノ
「シスター・マギー。ファーザーとの連絡を取り付けて頂けませんか」
いつになく真剣な私の表情に、さしものシスター・マギーも言葉を失った。
「どうしたんです。一体何を言い出すのですか?貴女の方からファーザーに連絡したいなどと」
「……貴女に隠すと、連絡して貰えないでしょうから、正直に答えましょう。これを」
私は脱帽し、頭に生えかけている角を見せる。
「……なんですか、頭を見ろと?」
「あぁ、まだ殆ど見えないんですね。ちょっと髪の毛を掻き分けないと……」
と、私はくしゃくしゃと角のある辺りの髪を選り分けて、その隆起を見えるようにした。
「……これは」
シスター・マギーは険しい顔になる。
「はい。私のサキュバスとしての魂が、再び励起しているようです」
「しかし、貴女はここしばらくはずっと、大人しくしていたはず」
シスター・マギーもそう思っているなら、エルフィの罪をここで公にするわけには行かない。
「えっと……すみません。自分で自分を慰めていたのです」
それを聞いてシスター・マギーは絶句する。なにか言われる前に畳み掛けようと私は言い募った。
「私の罪科は、まぁ神様がどうにかこうにか後で処断するとして、症状を何とかするには多分、あのジジ……ファーザー・ファリックに頼むしかないと思うんです」
「む、むむ……確かにそうですね。貴女の罪は後に懲罰房に……などと悠長な事を言っていられる状況ではなさそうですね。なるべく早くファーザーに来て頂けるよう、連絡はしてみます」
「お願いします」
私はそう言うと、自室へ戻った。
◇
「参ったなぁ……」
自室で私はベッドに倒れ伏し、枕を抱いて懊悩する。
何が参ったのか、というと、私が自分の力を取り戻そうと出来るチャンスを、自らフイにしようとしている事実にである。
「私、わざわざ自分から罪を告白してまで、こんな生活守りたいんだっけ……」
元の生活に戻りたいのか。
今の生活を守りたいのか。
咄嗟に取った行動を省みれば、その答えは明らかだった。
「ともかく、ジジイが来るまではエルフィとの夜の営みも程々にしないと」
私はそう決意すると、眠りにつくのだった。
サキュバス・イントゥ・ザ・シスター、9話です。
リリエルが自分からシスター・マギーへ罪を告白して対処を願う回。
いざ決断を迫られた時、自分の本当の気持ちが『サキュバス側』と『人間側』のどちらにあるのかを自覚し始める回でもあります。
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