8.予兆
気付いたのは転生してから1ヶ月目だった。
エルフィとの夜の秘め事を始めてから計算すると、21日目くらいだろうか?
およそ7回目のエルフィとの性交を終えた後の私は、いつもと様子が違った。
「……リリエル?どうしたの?」
着衣の乱れを直しながら、興奮冷めやらぬ火照った顔を私に向けてくるエルフィ。
その顔を見た途端、私の胸に熱い思いが去来した。
(あ、可愛い……食べちゃいたい……)
……食べちゃいたい?
(私は何を考えているんだ?)
私はごちゃごちゃする思考を振り払い、エルフィに向き直る。
「あ、うん、なんでもない……」
私も髪をなでつけ、修道服を着て、帽子を被ろう…としたところで、気付いた。
頭部の違和感。
「……なに、これ……?」
いや、違和感というよりも、それは、懐かしいというべきか。
―――角、だった。
ほんの1ヶ月だけ自分の頭の上から消えていただけなのに、何故懐かしいと感じてしまうのか。
それは、おそらく生えかけの歯のように、いつかと違って、僅かに隆起しているだけ、だからだろう。
指で触れると、ゴリッ、とした違和感がある。
「あ、これ、マジで角だ……」
私はその感触を何度も確かめ、勘違いじゃないよね、とエルフィにも確認しようとして、言い淀む。
「……リリエル?本当に大丈夫?具合でも悪いの?」
私の様子に心配そうな目をするエルフィ。
「うん……」
黙っておくべきだろうか。
私は悩む。
多分これ、ファーザー・ファリックが言ってた『サキュバスの魂が励起』された結果なんだ。
このまま放っておくと、私は恐らく……元のサキュバスに戻る。
しかし、そんな事をエルフィに言って、どうしようというのか。
「その……ちょっと、今日はいっぱいしちゃって疲れた……かな」
「あ、ごめん!私いっつも加減分からなくて。大丈夫?」
多少の罪悪感はあるものの、私は結局誤魔化すことにした。
相談すべきはエルフィではないだろう。
「うん。大丈夫」
にこりと作り笑いを浮かべ、エルフィの前では平静を装う。
この件は、あのジジイ……ファーザー・ファリックに報告し、然るべき対処を試みるべきだ。
私は内心で、そう決意するのだった。
サキュバス・イントゥ・ザ・シスター、8話です。
リリエルの『立ち戻り』が始まる回。
果たして彼女はどうなるのか。
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