5.シスター・リリエルは自戒する
「……大失敗だわ」
リリエルは後悔していた。
いや、この7日間、どうあっても解消しきれなかった性欲が、エルフィとの睦み合いのおかげで完全とは言わないまでも、後1週間は我慢できそうなくらいに雲散霧消しているので、完全に後悔はしていないが……。
「こんな調子で朝のお祈りとかやってらんないでしょ……」
時刻は朝6:00前。
いつもなら眠い目を擦りながらブーたれつつもどうにかこなしているお祈りの時間の準備を整えている頃だが、エルフィとの濃厚な性欲解消が祟り、すっかり寝不足に陥っていた。
「んあ~~~……人間の身体って不便……こんな事くらいでヘバっちゃうなんて……」
それこそ、サキュバスだった頃の自分なら、徹夜で男と交わろうが全然平気……どころかむしろ精気を吸い尽くして元気いっぱいになっていた訳だし。
「エルフィにも悪いことしたわね……後で謝っとこう……」
そう言いながら、修道服をシャキッと身につけてお祈りに向かうと、そこにはビックリするほどスッキリした顔のエルフィがいた。
「あ、お早う。シスター・リリエル」
「……お早う……」
呆れた。
昨日、自分とあれだけハッスルしておいて、なんでそんな元気なんだ。
精力絶倫、という奴なのだろうか……。
「さぁ、朝のお祈りをしますよ。みなさん、並んで下さい」
シスター・マギーが言うと、一斉に修道女達は並び、神に祈る。
一方、リリエルは死にそうになりながらも祈る仕草を形だけは整え、内心では『一刻も早くこの時間が過ぎますように』と必死に祈るのだった。
◇
「うぁ~~~……朝日が目に染みる~~~……闇の眷属たるこの私の領域ではない……」
「またそんな事を言って。今の貴女は闇の眷属ではなく、光の巫女ですよ。弁えなさい」
お祈りとミサ、朝食を終えて家庭菜園の世話に励むリリエルは瀕死の状態だった。
シスター・マギーのいつものお小言も、頭に殆ど入ってこない。
「ごめんね、リリエル。そんなにキツかった?」
世話をしながらこっそりと話しかけてくるエルフィ。思わぬ癒しに、リリエルは顔を綻ばせる。
「いやいや。私の方こそ、ほとんど一晩中付き合わせちゃってごめんね」
「ううん、愉しかった。
……私、もっとリリエルの事、好きになっちゃった」
うん?今、楽しかった、じゃなくて、愉しかった、ってニュアンスで言った?
しかも、『もっと』好きに?
……ま、まぁ、細かい事は良いか。どっちでも良い事だ。
ていうか、頭が働いていない。
「あー、うん。でも、やっぱ3日に1回くらいにしよう。ほんと」
「そうだね」
エルフィのタイミングに合わせてそのくらいの頻度にしないと、たぶん今の自分では保たない。
リリエルは今後のエルフィとの夜の生活について、程々にしなければ、と無意識のうちに自戒していたのだった。
それが、図らずも修道女としての禁欲生活に近づいている事と同時に、己の魂を磨き上げている事には気付きもせず。
サキュバス・イントゥ・ザ・シスター、5話です。
日常+伏線回。書き溜めが少なくなってきたので、更新速度をゆるくしていくかも。
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