表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/16

2.シスター・エルフィは誘惑する

「リリエル、いる?」


 リリエルが自室に引き篭もって、読みたくもない聖書の一節を適当にペラペラとめくって文句を呟いていると、コンコン、とノックをする同期のシスター、エルフィの声が聞こえた。


「いるわよー。何?」

「あ、リリエルのお話聞きたいな、って思って」

「んじゃ入ってよ」


 ガチャ、とドアを開けて彼女の姿を見た瞬間、リリエルはまたしても目を背けそうになった。

 エルフィはつい2週間前に修道女になったばかりだという、それはもう絵に描いたような清楚で可憐な少女であった。

 薄い金髪、青い瞳、透き通るように白い肌……穢れなき身体全体から溢れる処女の眩しすぎるオーラに、魂までアバズレに染まったリリエルは毎度のことながらウッ、と噎せ返りそうになる。


(前世だったらこういう可愛い女の子も喜んで食べちゃってたんだけどなぁ)


 リリエルは苦笑しながらエルフィを部屋の中へ迎え入れる。


「で、何?男を落とす講義なら、悪いけど教えらんないわよ」

「も、もう。そういう冗談はやめてって」


 リリエルのいつもの下世話なジョークにエルフィは恥ずかしそうに顔を赤らめ、そうじゃないの、と切り出す。


「リリエルはその、前世がサキュバスさんだったって話をしてたけど、今はもう人を襲いたくなったりはしない……んだよね?」


 怯えるようなエルフィにリリエルは肩を竦めて言う。


「そうよ。衝動が完全に消えたわけじゃないけど、基本的に前世みたいに、死ぬまで精気を吸い尽くす、みたいな食欲はないわね」

「そ、そっか。良かった」


 エルフィはホッとしたように笑う。そして、これを訊きたかったの、とばかりに本命の質問を投げてくる。


「それで、その……衝動って、大体どのくらいの頻度で来るの?昨日も、街に出掛けてたけど……」

「う~ん。転生してまだ1週間だし、どのくらいの頻度、って言われても……正直分かんないけど。

 ええと……確か、一般的な人間の性欲程度に抑えておいたよ、とかあのジジイ…おっと、神父様(ファーザー)は言ってた気がするわね」


 リリエルはファーザー・ファリックに封印された後の説明を思い出しながら辿々しく呟く。

 一般的な人間って、7日の間、1日も途切れずに性欲が疼き続けるものなのかしらん?


「一般的な……って言っても、個人差がありそうだよね」

「そうね。そもそも、人間ってどのくらいの頻度で性欲が来るものなのかしら」


 エルフィは首を傾げる。きょとん、とした様子がまた、無垢で可愛いなあ、などとリリエルが思いつつ、何気なく言ってみると、


「わ、私は……3日に1回くらいは……解消してる……よ」


 と、シスターの身にありながら、とんでもない事をのたまうエルフィ。

 リリエルは思わず噴き出した。


「か、解消って。あんた、男を……!?」

「ち、違うよ!自分で自分を……その、慰めてるだけだよ」


 真っ赤になってぷるぷると首を振り否定するエルフィ。得心するリリエル。


(あぁ、なるほど。自慰をしているのか……)


 前世じゃあそんな無益な行為をする意味がなかったので詳しくは知らないが、人間には自慰行為というものがあって、それで高ぶる性欲を鎮める習慣があるらしい。

 なんでも、その行為そのものが淫魔を生み出すエネルギーになってるとか、そんな話も聞いたような気はする。


「だからね、リリエルも自慰行為で衝動を鎮めると良いんじゃないかな……って、思うんだけど」

「あんた、それを言いにわざわざ私んトコ来たの?」

「そ、それだけじゃ……ないんだけど」


 今度はリリエルが首を傾げる番だった。


「じゃあ何のために」


 リリエルがエルフィに水を向けてみると、エルフィはまた、驚愕するような事を言うのだった。


「えと、その……女の子同士なら、そこまで悪いことじゃないと思うから……わ、私で良ければ、付き合うよ……?」


 リリエルの思考は停止した。

 かつては人間を思うさま貪り食った夢魔たる自分が、こともあろうに、修道女たるエルフィに淫蕩の誘いをかけられている。


「あー……えっと……申し出は大変嬉しい、けど……」


 良いのか?

 それで良いのか私は??

 エルフィはシスターとしてそれで本当に良いのか???

 そんな事を考えている自分が案外、修道女に染まってきている事実も忘我するほどに、それは衝撃的な告白であった。


「あ、じゃあ、私は3日に1回くらいはお邪魔するね。リリエルがその気にならなかったら、良いんだけど。タイミングが合ったら、ご一緒しましょ」


 まるでティータイムのお誘いのように言われているが、言っていることは完全に女色のそれだ。

 修道女が禁欲に耐えかねて女色に走る話は、まぁ、珍しくもないが……。


「あ、うん。分かった……」


 期せずして、労せずして自身の性欲を解消する手段を得てしまったリリエルは、拍子抜けしたような、残念なものを見たような気分になった。


「じゃ、またね」


 にこにこと、部屋で話す前に較べると些か濁りを感じるオーラを放つエルフィを見送り、リリエルは脱力した。


「ええー……。シスター・マギーに知られたら、俗欲の極みってめちゃくちゃ怒られそう……」


挿絵(By みてみん)

サキュバス・イントゥ・ザ・シスター、2話です。

1話ではなかった百合要素の投入です。

評価頂いてありがとうございます、徐々に続けていきます。


※2020/08/25 挿絵を追加しました。


------------------------------------------------------------------------------


面白かったので続きが読みたい!という方は


評価で★★★★★をお願いします。


感想、レビューなどもお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] まさかのレズ追加ですか、美味しいですな(๑´ω`๑) [気になる点] 我慢することができるのか? [一言] これからも頑張ってください。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ