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12.エルフィのお見舞い

「あぁ……1週間ぶりのエルフィの声……顔……癒やされるぅ……」

「大げさだなあ」


 とは言いつつも、エルフィも私に会いたがっていたらしく、顔を綻ばせた。

 天使……!

 私は手を組み、神様に祈るように、心の底からエルフィを見て浄化される気分だった。


「浄化されちゃ駄目だからね。はい、これ」

「え、何これ」


 苦笑しながらエルフィが渡してくれたのは、どうやら何かしらの遊具箱のようなものだった。

 パカッ、と開けると、そこにはボードゲームらしきものや、積み木、知恵の輪のような知的遊具の類が入っていた。


「……何これ?」


 私は同じ質問を2回繰り返した。


「暇潰しにどうかって、シスター・マギーが下さったの。リリエル、そもそも学校とか行ってなかったでしょう?」

「あぁ、そりゃあ……まぁね」


 今の生活は人間のフリをしているだけのようなもので、マトモな学校生活なんて、望むべくもない。


「だから、少しでもそういう生活に慣れるとかね。人間らしい、欲求の解消みたいなものを学んでいけたら、性欲以外にも『満たされるもの』が増えるんじゃないか、って仰って」

「あのババ……シスター・マギーがそんな事を……」


 いや、的外れな考えだとは思う。そもそも私の知能は、人間との性交渉をするにあたって、それなりのレベルにチューニングされている。

 今更『学校』生活を送る必要性があるかというと、また微妙なところだ。

 とはいえ、人間の考えうる範囲で必死に私の症状を治めようと考えた結果がこれなら、無碍にも出来ない。


「……まぁ、気が向いたら遊んでみるよ」

「あ、でもボードゲームは私と2人か、それ以上のメンバーでないとできないね。また、他の子も誘ってみるね」


 エルフィはそう言って、これは積み木でこれは知恵の輪だよ、などと子供をあやすように私に遊具の説明を始めるのだった。


 ◇


「ファーザー・ファリックからは性交は禁止って言われたけど、肉体的接触が駄目とは言われてないのよね。出来るだけ自然な感じでなら、大丈夫かな」

「どうだろ。それも試してみないとね」


 私はエルフィの手を握る。特にサキュバスの魂が励起するとか、症状が悪化するとかいう感じはない。

 むしろ、このくらいの接触、普通の事だ。大丈夫。

 私はエルフィの胸を揉む。……あ、駄目。完全にアウトだわ。わずかだが、魂が強まるのを感じる。

 キス……は、するまでもなかろう。NGだ。

 その他は……と、私はエルフィと可能なかぎりのスキンシップを試みてみるのだった。


「け……結構、キツい……」

「ホント、つらそうだね。強めの風邪にかかってるみたいに、真っ赤だし」


 一通りの検証を終えて、私はぐったりしていた。

 今の状態は完全な人間とは言えないので、異常なほどの発熱や血流が起きている。


「あー……でもなんか、エルフィが側にいてくれるだけで、すごい安心する」


 私は本心からそう思った。


「そう?なら良かった」


 エルフィは柔らかな笑みを浮かべて、暫くの間、私のそばで様子を見ていてくれた。

 こんな感じでエルフィが私のお見舞いを続けてくれるなら、あと半年くらいは何とか我慢出来るかも知れない……。


 私はそんな風に甘い考えを過ぎらせるのだった。

サキュバス・イントゥ・ザ・シスター、12話です。


エルフィがママみというか天使というか、そういう回。癒し……。

彼女は『天使にラブ・ソングを』におけるメアリー・ロバートみたいな立ち位置なんすけど、いや、そういう比喩を用いるには些か不純まみれのシスターだなこいつ。


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