表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/16

1.シスター・リリエルは馴染めない

「あ~~~。お腹すいた」


 赤い髪を振り乱し、汗を拭いながら、リリエルは大きなため息をつく。

 だらしなく土の上に座り込み、その拍子に、ゆったりとした修道服の上からでも分かる豊満な肉体が揺れる。

 そんな彼女の様子を見て、女子修道院長のシスター・マギーが嗜める。


「修行が足りませんよ、シスター・リリエル」

「そんな事言っても、修道院のご飯って粗食すぎるんですもの」


 リリエルは修道院の家庭菜園の世話をしながら、文句を言う。


「神は言いました。空腹こそが最高の調味料と」

「絶対言ってないでしょ。どこの神様がそんな俗っぽいお説教するわけ?」


 いつもながら適当な説教を垂れるシスター・マギーの態度に呆れ返りつつ、リリエルはトマトについた虫を追い払う。


「それに、貴女の場合は食欲よりも大きな問題があります」


 まーた始まった。

 リリエルは耳を塞ごうとするが、シスター・マギーはその手をグッと掴み、耳元で大きな声でお説教を始める。


「あなた、昨夜また街へ出掛けましたね?しかも、男をかどわかして性交に及ぼうとしたでしょう!」

「未遂でしょ!」

「そもそも、聖職者の身にありながら未だ俗欲を捨てきれていない事が問題なのです」


 リリエルの前世の魔力は凄まじく強力なものだった。

 今は彼女を退治したファーザー・ファリックの聖痕が(目には見えないが)全身至る所に刻まれており封印されているものの、かつての魔力の残滓は彼女の魂そのものにこびりついており、前世たるサキュバスだった頃の強烈な性欲は未だ衰えを見せずにいた。


「全く、神父(ファーザー)が折角貴女のために尽力して下さったというのに、反省の色ひとつ見せないどころか、文句ばかり。ああ、なんて嘆かわしい」

「あのねぇ!言っとくけど、死にたくない、生きたいとは言ったけど、こんなクソみたいな禁欲生活強いられてまで生きたいなんて思わなかったわよ!いっそ潔く浄化してくれたほうがまだマシ!」


 リリエルは激しく抗議する。

 単に見逃して貰えると思うほど甘くはなかったが、まさか自分の性質と正反対である教会に属させられるなんて、夢魔だって夢にも思うまい。


「はぁ~~~……今からでも辞められないの?シスターって」

「今更無理ですよ。ファーザーの聖痕が残っている限り、貴女は生涯、処女を貫き通すのです」

「うえぇ……前世は男なんて入れ食い状態の逆ハーレム、爛れに爛れた性活を送り放題だったこの私が、生涯処女ですって!?悪い冗談も良いところだわ」


 こんなやり取りも、もう何度目だろうか。

 詳しい仕組みは転生初日にファーザーから聞かされて、リリエルはこの世の終わりを見るような目になり、1日中自室に籠もり切ってわんわん泣き喚いた。

 寝て起きたら元通りになってないかな、という淡い期待は2日目にして裏切られ、清らかで慎ましやかな修道女の服に身を包む己が脆弱な肉体に絶望したものだった。


 あれから7日目。

 神は世界を7日かけて作ったというが、リリエルにとってこんな世界、出来損ないの間違いだらけだ。

 明日にでも世界が滅んでくれないかな。


 リリエルはそんな益体もない妄想を浮かべながら、家庭菜園の世話を終えて、自室に帰るのだった。

なろう投稿5作目、ちょっと長めの連載小説になる…かも?

タイトルはシンプルに『サキュバス・イントゥ・ザ・シスター』だけにしようかと思いましたが、ちょっと考えて副題という名の短いあらすじを後ろにくっつけてみました。長いっすね…。


------------------------------------------------------------------------------

書き溜めが6話分くらいはあるので、面白かったので続きが読みたい!という方は

評価で★★★★★をお願いします。

感想、レビューなどもお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ