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真犯人は

真面目な奴らばかりだと思ってたからこそ、この事件の犯罪者にはこっぴどく叱ってやらねばならないと思う。人間としてどうなのかと、小一時間問い質してやる。事は喫茶店で起こっていた。僕がトイレに行った五分間で赤く熟れた苺のショートケーキが食べられていた。僕は石頭だ。犯人を見つけるまで友達三人を返さないつもりだ。一人目は赤石。おっちょこちょいでよくミスをする。あいつならあり得る話だ。早速問い詰めてみる。「ま、まってくれよ。僕を疑うのか?」当たり前だろ。うっかり食べてしまったのなら早めに言っておけよ。「……僕も自分がうっかりやだとは思うけどこれは違うよ。ひとのものを勝手に食べる人間だって言うのか?」……そうだな。赤石はそこまで図々しい奴じゃない。何せ、人と会う時は決まって五分前に来るほどの几帳面な奴だ。勘だが、赤石は違うと思う。二人目は種岡。ときどき気違いのように暴れ回るあいつなら食べててもおかしくない。「俺が疑われてんのか?」ああ。お前が発作を起こして食べてしまったのなら自首しろよ。「おい、待てって。それは昔の話だろ? 昔の俺だったらもしかしたら食べたかもしんねぇが今の俺は違う。ほら、昔と今を比べてみろよ」確かに、種岡の顔は前より精悍な顔になっている。もしかして克服したのかもしれない。種岡は外しておこう。僕も鬼ではない。……とうとう三人目まで来てしまった。実のところいの一番に黒だと思って捜査をして来た。美味しいところは最後に、ってよくうだろ? そいつの名は杉下。僕に嘘をついてよくからかう最悪の奴だ。「杉下?あいつ帰ったよ」種岡があっさりと言う。……そうだった。奴の性格上、面倒ごとは嫌いだ。最後の奴にも問いただせず、他に怪しい奴もいない。捜査は失敗だった。時間をただ浪費しただけに終わってしまった。


 

***************************************************************



 しょうがないから残った二人を帰しておいた。被疑者ではあるが犯人が見つからない以上、残らせるのも酷だろう。

 犯罪の根本は裏表のある考え方に罪があり、人自体を憎んではいけないって誰かが言っていた。だからうっかりやの赤石も、たまに暴れる種岡も、面倒が起こったらすぐに帰る杉下を憎んではいけない。彼らは僕の友達だ。こんな僕に付き合ってくれる奴らなんてこの三人以外にいない。

 だからもう、ケーキのことは忘れる。いいさ。たかが五百円のケーキ、友達はお金で買えないんだから。

 でも、流石にこんなことは二度と起きて欲しくないから、今後の僕の生き方を変えていこうと思う。

 いつしか杉下が言ってた「斜に世の中を見ろ」って言葉、良い言葉だと思う。お人好しで、すぐ誰の意見も信じちゃう僕が身につけなきゃいけない能力だ。


 これからは色んなものを斜めに見よう。

 そうだな、例えば小説とか。左上から右下へ一本の線を引くようにして読んでみたり。……変になって読めなさそうだな。

 でも違った見方から色んなものを見るのも良い経験だ。もしかしたら求めていた答えがそこにあるかもしれないし。


 もっと世の中を斜めに見ていこう。



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