04 ピンチを乗り越えても何も芽生えない?
あの馬鹿とお嬢様は、つい先程一緒にピンチを乗り越えたというのに、何も芽生えないようだ。
お嬢様の方の幼なじみが、巻き込まれ体質なもんだから、何かの事件に巻き込まれる事はしょっちゅうある。
大抵は、馬鹿の方に泣きつかれて、知恵を授けたり、必要な物を与えたりしてるんだけど、さすがに何回もごたごたにまきこまれると慣れた。
もういっそひらきなおって、「これ、こいつらくっつけるのに利用すればいいんじゃないか?」と思ったので、二人っきりにしてみたというのに。
二人を町に放って数秒、柄の悪い人間達に囲まれて乱闘騒ぎになって、その後えん罪なつりつけられそうになったら、かつ小一時間くらい逃避行して、目撃者捕まえてえん罪はらしてもらって、途中で見かけた困ってる人助けて、最後に犯人捕まえて。
なんて事二人でやったらしいのに、なんで何も進展してないんだ。
「おい、女顏」
「おい、お前みたいな呼び方すんなよヨルン。夫婦か」
「おぞましい事いうな。さっき、あのお嬢様が一人で無法者集団につっこんでったって聞いたんだが?」
「あたりだ。いやーたくましいよなー。惚れちゃうぜ。あっ、俺もう惚れてたんだった」
「いやーたくましいよなー。じゃないだろ、何呑気に観戦してるんだよ。そこは男のお前が体はるもんだろ」
「うっ、だって、一般市民が巻き添えになりそうになってたのを守ってたら、何か知らない間に役割分担ができちゃってたんだよ。あっちが敵に突撃してたんだよ。で、こっちは防衛の方にまわってた」
「お前らの性別が逆だったら良かったのにな。きっと、うまくいってた」