02 馬鹿の幼なじみ
通っている学校のクラスを見まわしてふと気が付いた。
これはもやは習性になってしまっている。
この景色に何か足りない。
そうだ馬鹿だ。
あのへんじ、ではなくきちが、ではなくアホ、ではあるな。
その、アホで馬鹿な幼なじみがいない。
僕はいつものように隣のクラスに乗り込んで、そこにいた貴族令嬢の方の幼なじみに声をかける。
「すいません! こちらに馬鹿が来ませんでしたか!?」
「あっ、ヨルン」
幼い頃から付き合いのある彼女は、頼もしく面倒身が良いからクラスの中心的存在だ。
そんな彼女の周囲には大勢の人が集まっているが、幸か不幸かあの馬鹿の姿はなかった。
「おい、馬鹿! どこに隠れてる!」
貴族令嬢の幼なじみは気まずそうにしながらも、視線を動かす。
不自然になびくカーテンの方へと視線を向けていた。
そこか。
僕はそのカーテンをひっぺ替えして、裏にいた馬鹿を確保した。
「おわっ! もう来たのかよヨルン!」
「授業の準備さぼってどこで油売ってるんだ。当番だろ、さっさと来い」
「えーっ、俺まだこのクラスで話足りないし遊び足りない!」
「煩い! いいからいくぞ」
わがままを言う馬鹿の方の幼なじみを、強引に引きずっていく。
この馬鹿がこっちに来たのは、彼の意中の相手である貴族令嬢がいるからなのだが、肝心の当人には伝わっていないようで。
「そんなにこのクラスが気に入ったのね、遊びに来るならちゃんとやる事が終わってからじゃないと駄目でしょう」
なんて馬鹿に言い聞かせてる。
あなた目当てでこのクラスに来てるんですよ、と言いたい鈍さだ。