さるすべりの歌
さるすべり
ピンクの花だよ
さるすべり
百日咲くから
百日紅
さるすべり
猿も木から落ちるほど
つるつるとすべる
百日紅
さるすべり
この家の顔
みなが見上げる
さるすべり
さるすべり
門戸を挟んで
ひょろひょろの桜
植えられた
さるすべり
ひょろひょろの奴を
からかった
さくら さくら
きれいだといわれて
さくら さくら
何年も咲かないじゃないか
さくら さくら
ずうたいばかり大きくなって
さくら さくら
初咲きの少ないことよ
さくら さくら
どうだ私をみてみなよ
あっという間に散る事もなし
濃ゆい紅を百日も
咲き誇っていくんだよ
さくら さくら
しかし お前は伸びてくね
どんどん どんどん どんどん伸びて
しまいにゃ家を越すほどに
さくら さくら
そんなに伸びてなんとする
お前の枝が伸びすぎて
私のとこまで影をつくる
さくら さくら
どれだけ伸びる
私の足元まで
根をはって
気がつけば
身体を蝕む虫に侵され
気がつけば
光が届かぬ桜葉の影
私は老婆に成れ果てた
ある日庭師がやってきて
私の中まで幹触れて
ざらり ざらり と確かめる
さるもすべらぬ私の身体
荒れてしまった私の肌を
ああ、時がきたのだ
さよなら
さよなら
さよなら さくら
お前が優しく根を曲げて
私に当てないようにと足曲げて
右へ左へ下へ下へ
伸ばしてくれたの
知ってたよ
さよなら
さよなら
さよなら さくら
ちくしょうめと思いながらも
お前の咲かせる薄墨桜
見惚れていたんだ
ちくしょうざくら
さよなら
さよなら
さよなら さくら
お前が咲いた
姿、夢見て
私はいくよ
さよなら
さよなら
さよなら さくら
さよなら
さよなら
さくら さよなら