勇者じゃない俺の勇者らしい訓練(本番)
すみません前回よりも長いです。
「さぁ! 次は誰だ?」
ユリウスは、倒れたエイジをすぐ衛生兵に任せ次の相手を呼ぶ。
強すぎるっ!?……俺は、すぐに鑑定をする。
ユリウス=ハインセルド レベル58
職業 聖騎士・剣聖
攻 6500
守 6200
魔 3550
精 4900
気 5200
速 5000
運 70
スキル 剣術5 剣聖術2 身体強化3 鉄壁 直感 盾術4 気配察知2 危険感知3 光魔法2 聖術1 闘気術3 魔纒術3
なっ……なんだよ……このステータス。
「なっ何か見えた? シノノメ君」
聞いてくるのは剣道部ホープの御劔奏に見たものをそのまま伝える。
「勝てると思わない方が良い。 全体的に俺達の10倍以上のステータスでハヤトでも一部が6倍程度。 あれは化け物だわ」
「嘘っ……ほんとにヤバイわね。 さっきの攻撃も何も見えなかったし」
ん? 今なんて言った?
何も見えなかった?
いや、いやいや一瞬だけど俺見えた気がするんだが……。
俺のステータスを覗く。
あっ、観察眼ってスキルが習得できてる。
これ……スキル習得率激増のおかげか?
「おいおい、威勢があるのはエイジだけか? 別に死にはしないんだから、迷わず打ってきたら良いだけだぞ?」
ユリウスが言う。
うん、普通にそれが無理。
出来るなら苦労しない。
「じゃあ、ちょっと私が行ってくる。 さっき見せてもらったこと踏まえて頑張ってみようかな?」
そう言って御劔がユリウスの前に立つ。
「お前の名前は?」
「柳一刀流門下、カナデ=ミツルギです。 押して参ります」
「よしっ! 来いっ! カナデ!!」
また、名前を聞きそれを合図に試合が始まる。
「柳一刀流抜刀術が一つ風鈴流っ!」
技名を言いながら、刀を横薙ぎに振り抜く。
だが、やはり当たらない。
「それは異世界の剣術か? 成る程一応此方の世界にも刀を使う者達がいるがその剣術に似ているな。 俺も初めて見る型だ。 楽しませてくれっ!」
そう言って獰猛に笑うユリウス。
続けざまに刀を翻し攻撃するカナデ。
幾つも技をうち、フェイントをかけ、隙を作ろうにもできない。
そんな状態が続く。
「やはり、強いなカナデっ!! だが王国騎士団第一師団長としても負けられんのでね」
そう言ってカナデとの間合いをすぐさま詰める。
また胴を狙った攻撃。
ただ、エイジの時と違うのは剣の腹で当てダメージを少なくしていること。
カナデが女であることと革鎧だからだろうと理由が分かる。
もう一つエイジの時と違うのは、俺がガッツリと攻撃の筋が見えると言うとこだろう。
「がはっ!?」
体から強制的に空気が抜かれる声を出しながら吹き飛ぶカナデ。
「さぁ、次は? 女を先に動かせたんだ。 そんなに腰抜けなのか? お前達は?」
その言葉に大半の者に火が着いた。
皆我先にとユリウスに挑む。
だが、すぐにやられる。
一人、二人は搦め手とも言えるような攻撃を浴びせたが、触れた瞬間には投げられている始末。
回りは死屍累々──誰も死んではいないが──のような状態である。
まぁ、死屍累々の中で一番ひどいのは勇者オブ勇者の彼だ。
一番善戦したと思う。
そのせいでぼこぼこなんだけどね。
で、残りは──
「残りはお前だけだ薬師。 男も女もかかってきたのにお前だけそこから一歩も動いてねぇじゃねぇか。 ビビってたのか、それとも連戦して疲れたところを狙おうとした策士なのか分からんが最後だ。 早く準備しろ」
そう、残りは俺だけだ。
皆が吹っ飛んでるなか俺だけ動いていないからな。
「どちらでもないが、あえて言えばどっちもだな。 鑑定したらヤバイくらい桁違いだし、そりゃあビビるわ。 まぁ、連戦して疲れたら良いなぁと思ってもいたけど」
そう言って剣を構える。
「ハッハッハッ! お前鑑定持ちだったか。 そりゃあビックリするわな。 まぁ、連戦していたが疲れてもないから当ても外れと。で、どうする? このまま辞めるか?」
ユリウスが挑発的に言ってくる。
まぁ、辞めたいのは山々だが、回りの目が痛い。
「無理に決まってんだろ? はぁ……何でやりゃなぁならんのだこんなこと」
「薬師、名前を聞こうか」
「アキラ=シノノメ」
「最後だっ!! 来いっ! アキラぁっ!!」
また、それを合図に始まる。
真っ直ぐハヤトやカナデより遅く、エイジよりかは速くユリウスに向かう。
「フッ!!」
短く息を吐きながら剣で切り上げる。
「甘いな、だが筋は良い」
それを軽々と避けるユリウスに向けて一歩踏み込みながら手首を反転させて二連撃目を振るう。
「うぉっ!? やるなぁっ!! 上手い返しだ」
それも避けられたところで、前蹴り。
それを回避されたところでこちらもバックステップで距離をとる。
まぁ、とりながら投げナイフを使用する。
「全くもって騎士道やらから離れた事を平然とやるなぁ、アキラ」
「んなもん習ったこともねぇし、あんたみたいなのが騎士道なら騎士が戦闘狂の集まりとしか思えんからなりたくもねぇ」
投げたナイフを全て払い落としながら呆れたように言うユリウスに言葉を返す。
「ハッハッハッ! 言われてみればそうかもしれんな。 まぁ、俺はその騎士道でお前と戦うとしよう」
そう言った瞬間に、ユリウスからくる威圧が強くなる。
……来るっ!!
ユリウスがこちらに向かってくる。
俺達より断然速い。
だが、見えないわけではない。
ユリウスが全員相手にしているときに胴しか狙わないことは確認している。
大剣が俺に向かってスイングされる。
剣を俺と大剣の間に入れて威力を相殺しつつ自分も流れ方向に横跳びする。
「ほう、今のが見えてたのか? 初めて避けた奴が現れたな。
ハヤトもギリギリで流したり盾で受け止めてたんだがな」
「いや、避けてねぇよっ!! 痛ぇしこんなのハヤトとかガタイ良い奴じゃねぇと受けれねぇよっ!!」
感心したと言う風にユリウスは言っているが、ほんとに避けれてないのだ。
横跳びしたのにくそほど痛いダメージが入るし、未だに腕がビリビリする。
剣も体に少し当たったのか呼吸するのも少し辛い。
それでも試合は続く。
さっきと同じ力の攻撃だが、今度はしっかりと見て回避する。
「ハッハッハッ!避けろ避けろぉっ!!」
ユリウスは、変なスイッチでも入ったのかガンガン攻撃してくる。
ぜってぇ今頭イッテるこいつヤベェッ!?
ちょっと最初より大振りになったお陰で隙はちょこちょこ見つかるんだがブンブン振り回す大剣のせいで近づけない。
「くそがっ! 滅茶苦茶怖いけどやってみるか」
「どぅおりゃあぁぁぁぁっ!!」
本気で大振りするユリウス。
その大剣の上に俺は乗り、ジャンプする。
「目ぇ覚ませっ!! バカ戦闘狂がぁっ!!」
剣を思い切りユリウスの脳天目掛け振り下ろす。
だが、途中で冷静になったユリウスは頭部をずらす。
肩に剣を振り下ろした感触がした瞬間に俺は、殴り飛ばされた。
訓練場の壁にめり込む俺。
身体中からバキバキと折れる音が耳に聞こえる。
その後、回りから悲鳴と衛生兵を呼ぶ声がしたのを聞いて俺の意識は飛んだ。
読んでいただきありがとうございました。
七八転です。
今回も新キャラのカナデ=ミツルギちゃんのステータスを出します。
カナデ=ミツルギ レベル1
職業 勇者・剣豪
攻 350
守 220
魔 230
精 300
速 540
運 70
スキル 刀術3 俊敏性増大 気配察知2 身体能力上昇
となります。
クラスの中では上位陣と言うかトップクラスですね。
これからもこちらにキャラステータスを出すことが多いと思います。
では、次回も読んでいただければと思います。