勇者じゃない俺の勇者らしい訓練
少し長めです。
異世界生活2日目
俺達は起きて身だしなみを整えた後、全員で朝食を摂り王城の近くにある兵士の訓練場へ来ていた。
心なしか転移者全員の足取りが軽く感じたが、仕方ないだろう。
皆、特殊な力を持ってる特別な存在になったのだから。
全員が集まったあたりで大男が前にある壇上に上がり声をあげる。
「あー、全員集まっているな? 俺は、王国騎士団第一師団長で近衛騎士筆頭のユリウス=ハインセルドだ。 お前達の訓練を視ることになっている。 ただ、俺が教えられるのは剣を使ったものやその他の武器、まぁ槍やら弓やらだな……それらだけだ。 魔法適正の高い者達は、次に紹介される者が指導する。 じゃあ、次頼むぞ!! アリシェーラ」
そう言って大男が降りた後、ローブを着た女性があがる。
「まったく……ユリウスから先ほど紹介されてしまったが宮廷魔術師筆頭のアリシェーラ=ピラーだ。 貴方達に魔法とはなんたるかを教える。 また、聖術にも通じているためそちらの担当も行う」
言ってすぐ、壇上から降りる。
この二人のイメージは片や熱い男片や冷静な女って感じだ。
「よし!! じゃあ質問あるか? ん? なんだ? そこの目付き悪いの」
大男─ユリウスが問う。
その目付き悪いのとは俺のことである。
「大体全員には職業・勇者が有りますけど俺には有りません。職業は薬師と錬金術師なのですが訓練の際はどこに属したら良いのでしょうか?」
「あー、お前がステータスが勇者でもねぇのにアホ高い薬師か!! それなら、問題ない。 お前は一度両方やった後どちらか決めれば良い。 まぁ、ステータス的には問題ないからな他に何かあるか?」
その後、ちょこちょこと手を挙げ質問する者が出てくる。
例えば、職業に魔法剣士と有るのだがどっちを受ければ良いか等だ。
結果そいつは、剣と魔法の両方を受けることになり、重点をどちらに置くかその後に決めるようにということだった。
「質問は以上か? なら、適正に解れろ!! あっ、薬師と魔法剣士は此方に強制な? 魔法は後で、教えてもらえるからな」
と質問が終わった後、解散し俺や魔法剣士持ちは強制的に騎士の訓練の参加した。
──騎士訓練side──
「では、訓練の内容を話すぞ!! 基本的にはお前達にはここにある武器、防具から好きな物を一度手にとってもらう。 その後に体がちゃんと動かせるかの確認のため一人一人俺と模擬戦を行う。 少し痛いかもしれんが問題ない!! 衛生兵には近くで待機して貰っているからなっ!! では各々好きな武器と防具を取れ!!」
そう言われた俺達は皆武器を取りに行く。
中には、メジャーな片手剣や両手剣、短槍、長槍、弓やボウガン、中にはマイナーな鎖鎌やらチャクラムやらまであった。
各自、自分の職や性格にあった物を選んでいるようだ。
俺? 俺は、簡単に自衛さえ出来たら良いんだからと片手剣を選んだ。
手に取った片手剣は刃を潰して有るとは言え、日本で見ることのない凶器であり、鉄の重さを直に感じる。
一応、少し振ってみたが、振れない重さでもないのでこれにした。
防具は半々くらいで金属と革に分かれた。
防御重視が金属、速さ重視が革といった具合だ。
俺は、革の鎧を選んだ。
だって金属鎧滅茶苦茶重そうなんだもん。
そこまで皆決まったところでユリウスから声が掛かる。
「全員、決まったな? よしじゃあ、最初は誰が模擬戦する?」
良い笑顔で如何にもな大剣を担いでいるユリウス。
あんなの誰が相手したいと思うのか……。
「よっ……よしっ!! お、俺から行きます!!」
そう言って名乗りをあげたのは、確か……野球部で4番張ってた園部英二か。
「お前っ!! 名はなんだっ!!」
「エ、エイジ=ソノベッスっ!!」
「ハッハッハッ!! エイジッその意気や良しっ!! だが、別に殺し合う訳じゃないんだ。 もっと気を楽にしておけよ」
そう言われても緊張するだろう。
あんなアホみたいにゴツい人間が大剣ブン回しているのなんか見たら……。
因みにエイジも俺達の中ではでかい。
確かに190センチ位あったと思うがユリウスはその一回り大きい。
2メートルはあると思う。
どちらも巨漢だがもうユリウスの威圧感は別物だった。
彼らの装備はほぼ同じだ。
エイジもユリウスもフルプレートアーマーの頭だけフルヘルムじゃないものである。
武器に関しては、さっき言ったようにユリウスが大剣でエイジはと言うと戦槌である。
職業戦槌士の力や筋力増大や戦槌術3の補正を狙ったのだろう。
簡単に言うと、どちらもバカでっかい剣とハンマーなのだ。
「さぁ、エイジッ何処からでも掛かってこい!!」
このユリウスの言葉を合図に始まる。
「うぉぉぉらぁぁぁッ!!」
エイジは戦槌を担いでユリウスへ向かう。
その速さは、一年前に見た体育祭のリレーより速い。
それくらい能力が上がっているのだろう。
そんなエイジは上段から戦槌を振り下ろす。
ボガッ!! と言う音が地面に響く。
これまた速さと同じで強化されているのだろう。
「中々の威力の攻撃だ。 だがそれでは当たらんよッ!!」
ユリウスは先ほどいた場所から3歩程度後ろにいた。
動いたところが見えなかった。
それくらい速いのだ。
それから何度も攻撃を与えようとエイジがしても軽く躱し、一発も当たらない。
「さて、そろそろ終わらせよう」
そうユリウスが言うと、すぐに変化が起こる。
先ほどより速くなっているのだ。
「ふんッ!!」
気づいたときには、エイジの胴に大剣が振り抜かれそれが見えたときにはエイジが吹き飛ばされていた。
ほぼ名にも見えていない。
どう避けたか、どこで攻撃の隙を見ていたのか。
「エイジッお前は良い動きをしていたが如何せん特攻し過ぎる。 今度は、戦槌の大きさを小さくして大盾でも持ってみると良い!! さぁ、次は誰がやる?」
ユリウスの笑顔がまるで死を招いている悪魔のように見えた。
まだ、訓練の始まりに過ぎなかった。
読んでいただきありがとうございました。
今回登場したエイジ=ソノベ君のステータスを出します。
エイジ=ソノベ レベル1
職業 勇者・戦槌士
攻 450
守 430
魔 200
精 250
速 190
運 50
スキル 戦槌術3 筋力増大 身体強化1
エイジ君は、所謂脳筋ステータスですね。
因みに3とか1とか言うのはそのスキルの強さですね。
詳しくは本編に載せようと思っていますが、少しだけ。
1から5までで強さを表します。
ないものに関してはそれが限度値であり、変わることがないと言うことです。
次回も訓練です。
果たしてユリウスの力に主人公達はどうなるのか!?
では。