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普通の学園生活って何ですか?  作者: 有木千夏
第四章 『学園内予選』
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一人の少年

「……」


 赤と黒のツートーンの髪が潮風でなびく。

 光を失った黒い目は、何もない地平線を見ている。

 赤道付近の島で一人暮らしている少年、ユウエンは来客に対しても興味を示さない。


「ユウエン」

「……何?」


 その名を呼ぶのは、白いフードを被った隠者(ザ・ハーミット)との契約者、ウィル・レガースだ。

 ユウエンは後ろを振り向かずにただただ地平線を見ている。


世界(ザ・ワールド)が目覚める。至急、本土へ移動せよ」

「……どうでもいい」

「世界が変わるのだ。お前の恨み、悲しみも消えるぞ」

「僕の恨み、悲しみ……」


 ドクンッ。

 と、意識から外していた昔の記憶が蘇る。


「う、うぅ……あ、ああぁぁぁ!」


 苦しみ出すと同時に骨をむき出しにした幽霊のような死神(デス)が顕現し、持っている鎌を振り回す。

 地面を抉り、空気を割き、ウィルの体も両断するが霧となって消える。

 すると、別の場所からもう一人ウィルが歩いてくる。


「その苦しみから解放されたいだろう? 本土へ来るんだ」

「恨まれている、拒絶される、認めてくれない、誰も、誰も!」


 またもウィルの体を両断するが、別の場所からウィルが歩いてくる。


「だから世界を変えるのだ。新しい世界ではお前を尊敬する人がいる、怖がらずに接してくれる人がいる、認めてくれる人がいる」

「怖い、嫌だ、もう誰とも接したくない……」

『……可哀そうな子』


 死神(デス)は骨の手でうずくまるユウエンの頭を撫でる。


『怖い、辛い、寂しい。こんな世界、私が消してあげましょう』

「信じられるのは死神(デス)だけ、死神(デス)だけが僕を認めてくれる」


 再度死神(デス)は鎌を振りウィルの体を切り刻む。


「暴走、ではないな」


 言葉混じりに体は霧となり、ユウエンの正面からウィルが歩いてくる。


「その力があれば、この世の理、(ソラ)をも殺せる。私たち契約者は望んでいるのだ、ユウエンの力を」

「僕の、力……違う、本当に欲しいのは死神(デス)の力だ。僕なんて必要ない!」


 死神(デス)は鎌を振り上げ下ろすが、その瞬間に鎌が消え、ユウエンは今起こった事に驚く。


「鎌が……?」

「私の力で隠した、何度も切られるのは辛いものだ」


 鎌を失った死神(デス)は周りを見て、自分の鎌がどこに行ったか探している。

 その間にウィルはユウエンとの距離を詰める。


死神(デス)は負の感情が強い者にしか契約出来ない。記録では顕現まで使いこなせたのはユウエン、お前しかいない。死神(デス)の力があっても使いこなせなければ意味がない。私たちは死神(デス)を使いこなすユウエンの力が欲しいのだ」

「僕の力を……」


 と、納得したのを見てウィルは鎌を死神(デス)の目の前に出現させた。


「近いうちにまた来よう。その時に答えを聞かせてくれ」


 鎌を取った死神(デス)は後ろを向くウィルを切ろうとするが、ユウエンが手を出し止めさせる。


「切らなくていいよ」

『……』


 死神(デス)とユウエンは海へと歩くウィルを見ると、波が立ち風景と同化していた一隻の小型空中船が出現した。

 白と金の煌びやかな小型空中船は、ウィルを乗せると空気を後方に流しながらすぐに飛び立つ。


「僕を認めてくれる世界……」


 そんな世界を想像しながら、ユウエンは死神(デス)の手を触る。


死神(デス)と一緒なら、変えられる」

『私は常にあなたと一体、世界を変えに行きましょう』


 遥か遠くの本土へ、二人は期待を寄せていた。

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