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普通の学園生活って何ですか?  作者: 有木千夏
第四章 『学園内予選』
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私は……そう、赤城波奈

「このお団子、美味しいですね」

「ええ、食べなれた味です。これはいつでも思い出せますね」


 学園内の甘味処で、制服姿の紅葉と桜の絵が描かれた黒い着物を着る赤城波奈。

 波奈は光の無い目線を団子に送りながら食べ続ける。


「魔闘大会、今年は荒れそうです」

「どうしてです?」

「前に我が校へいらした(セント)ヴァルナ・ノワール学園の方、一年生のペアが二組も本選へ出るようですよ」

「そうなのですか、それは凄い能力者なのでしょう」

「その一組は、七竜王(セブンスドラゴン)の契約者とアルカナの継承者のペアです」

「そうですか……はむ……」


 饅頭を食べる波奈に紅葉は微笑む。


「嘘じゃないですよ? 本当に、凄いお二方なのです」

「もしかして、あの子たちですか?」

「え?」

「「うぐぇ、う”ぇっ……おろろろ……」」


 波奈の目線の先には、灯の下で海に向かって思いっきり吐いている天羽とフェルンがいた。

 隣にはカグラ、遥か上空にはホーミングが待機している。


「麗城さん、フェルンさん!?」


 食べかけの団子を置いて、急いで二人の元へ向かう。


「もったいない。ぱく……」


 その団子をひっそりと食べてお金を置き、波奈も紅葉の後を追う。


「さっきよりひでぇじゃねぇか。ニヴィンに怒られるぞ?」

「私が謝ってきます。ニヴィン、起きていますか?」


 紋章から出たフレスは暗い海を照らしながらニヴィンの元へ飛んで行った。


「麗城さん、フェルンさん!」

「お? お迎えが来たようだぜ」

「え……?」

「はい……?」

「大丈夫ですか、そんなに青ざめた顔をして!?」


 駆け寄る紅葉に顔面蒼白の二人は倒れる。


「こりゃ話どころじゃねぇな。二人を寝れる場所まで連れて行ってくれ。俺が送るとまたこの様になっちまう」

「わ、わかりました。ですが、あなた様は?」

「俺はニヴィンと遊んでいるよ」

「ニヴィンと……もしかして、カグラ様ですか!?」

「せいかーい! ちょっと後ろの嬢ちゃんに用事があってな」

「……?」


 紅葉の後ろには団子の串を持った波奈がいた。


「赤城お姉さまに?」

「ああ。だが、もう夜も遅い。俺の事は気にせず二人を寝かしてやってくれ」

「承知致しました。詳しい事情は明日に」

「おう、任せたぜ」


 そう言ってカグラは一筋の光となって夜空へ消えた。

 旅館の人も集まり二人を客室へ運び寝かせ、翌日の昼になり経口補水液を持ちながら紅葉、波奈と対話した。


「すみません、ご迷惑をおかけして」

「いえ、良いのですよ。それで、赤城お姉さまにどのような用でいらしたのですか?」


 フェルンと天羽は頷き、(ザ・ムーン)の事について聞く。


「赤城さんの(ザ・ムーン)の能力について聞きたくて」

「そうですか」


 答えると、黒いショートヘアが夜空のように輝き手の平に一枚のカードが現れる。


「これは?」

(ザ・ムーン)の能力で見せている幻影です。出来る事と言えば、本物と見分けがつかない程に完成化された幻影を作る事です」

「それは、人を作る事も出来ますか?」

「人ですか……やろうと思えば出来ると思いますが、もう覚えていないですね」

「覚えていない?」


 暗い表情をする波奈に紅葉は付け足す。


「赤城お姉さまは(ザ・ムーン)の力を使って数多くの幻影を作りました。その中で……とても言いにくいですが、今の赤城お姉さまが本物の赤城お姉さまなのか、それとも(ザ・ムーン)で作られた幻影なのかもわからないそうです」

「昔の記憶が無いのです。どこで生まれ、何をしてこの学園に来たのか、考え始めると切りがないのでもう止めました」

「そう、なんですか……」


 空気が重くなる客室。

 漣の音が聞こえる程に静かになり、それをフェルンが破る。


「赤城さんは、ダグラス・クロウリー学園やディヴィアント学園に行った事はありますか?」

「どうでしょう。行った事があるような、無いような……」


 もしかしたらと天羽は思いついた事を言う。


「幻影のように見せる……それは、自分の記憶すらも改ざんして無かった事にする事も出来ますか?」

「……はい」

「だよな……」


 天羽は頭を抱えて、視線を送るフェルンと紅葉に考えを言う。


「多分赤城さんは、過去に人を作った事がある。でも、その記憶は(ザ・ムーン)の能力で改ざんして無かった事にしている。もしかしたら、今目の前にいる赤城さんも(ザ・ムーン)の能力で作られた幻影かもしれない。本当の体は、誰かに囚われている……」

「その考えに至った理由を聞かせて貰えますか?」


 真剣な顔になる紅葉に天羽は続ける。


「ダグラス学園長が、ある人から偽物であると聞きました。(ザ・ムーン)の能力で見せている幻影だと。本物のダグラス学園長は別の場所にいます。赤城さんは無理やりそれに加担させられたのではないかと」

「記憶の欠落、それが本当でしたら納得はいきます。今の私が本物かは自分でもわかりませんが、例えば大切な人を殺すと脅されたなら、私はどんな悪い事でも(ザ・ムーン)を使います」

「赤城お姉さま……」

『貴様は本物の人間だ』


 と、急にフェルンの紋章からアルククが話す。


「アルクク、どうしたの?」

(ザ・ムーン)の幻影では命の熱を生み出す事は出来ない。貴様らの言葉で言うハリボテというやつだな。人間には大小あるが命の熱を、ゼビルズを喰らい我は感じる事が出来るようになった。七竜王(セブンスドラゴン)の名に誓い保証しよう、貴様は人間だ』

「私は、本物……」


 波奈に笑顔、そして目に光が現れ涙が出る。


「私は……そう、赤城波奈。本物、なんですね……」

「アルククが嘘をつくことはありません。それは私が保証します」

「赤城お姉さまの悩みが一つ晴れて良かったです。ありがとうございます」


 二人に礼をする紅葉を遠目から魔法で見ていたホーミングとカグラが口を開く。


「やはり乗せられていたのぉ」

「予想通りだが、あの嬢ちゃんが本物ってわかってひとまずは安心か。これでディヴィアント学園に体を奪われているなら面倒な事になったぜ」

「来る時は一言言ってほしかったよ、カグラ」


 ニヴィンの頭の上には雄山が乗っており、学園を見ながら言う。


「すまねぇな、岸波のおっちゃん」

「だが、これで僕たちは味方と分かったね」

「敵はダグラス・クロウリー学園とディヴィアント学園じゃ。後はユウエンを味方に付ければ、何とか戦えるかのぉ」

「ユウエン君の海域は、どんなに新鮮な水を送ってもすぐに傷む。実際に行って見た訳じゃないけれど、行くなら相応の準備と覚悟を持ってね」

「わかっておるわい。その為に儂らも同行する」

「斑鳩君は必要かい?」

「儂を越える回復能力の持ち主を無駄にする訳にはいかん。何かあったらカグラでお前さんの学園にすぐ連れて来る」

「わかった、行くときは言ってくれ。斑鳩君にも伝えておこう」

「じゃ、俺は二人を旅館に返してくるぜ。あまり遅いと連れに怪しまれるからな。頭目も可哀そうだ」

「ニヴィンよ、また海を汚すことになるだろう。先に謝っておくわい」

「その程度では海は汚れませんよ。大陸の国が捨てる海洋ゴミの方が深刻です。私の腐食能力でも腐食出来ないので、アルククが燃やし尽くしてくれれば良いのですが……」

「それはダグラスの件が収まった後に頼むんだな。行ってくるぜ」


 と、一瞬で客室の窓前に到着し部屋の中にいる天羽たちを驚かせる。


「いきなり現れないでください」

「わりぃわりぃ。話は済んだようだし、旅館に戻ろうと思ってな」

「旅館ですか?」

「うちの学園は、本選出場者に温泉旅行が付くんですよ。今はそれの途中でして」

「そうだったのですね。戻られたらゆっくりと体を休めてください」

「ありがとうございます」

「それじゃ、もう一度光速の旅だ!」

「あ……」

「……」


 あからさまに嫌な顔をする二人に紅葉と波奈は笑う。

 それに二人もつられ覚悟を決めた笑みを浮かべる。


「お世話になりました。また」

「はい。次は魔闘大会でお会いしましょう」


 そしてカグラに抱えられた二人は瞬きをするともう旅館の浜辺に着いており、一気に吐き気が登って来る。


「「う"っ……!?」」


 部屋から帰還を見ていたレイシスは急いで浜辺に行き、二人を介抱するのであった。

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