至高のホーミング
「初めましてじゃな、レイシスの教え子。儂は魔法協会No.2、至高のホーミング、魔法使いじゃよ。はよ座れ」
と、座りながら天羽たちに挨拶をし、皆を座らせる。
「それじゃ、打倒世界の作戦会議を始めるぜ」
そう言った瞬間に、天羽たちの周りを囲むように鉄檻が出現した。
「うわっ!」
「な、何ですか?」
「これで俺たちは時の牢獄に入った。準備完了だ」
どうやらこの鉄檻に囲まれると時間が停止するようだ。
カグラはそれを確認するとホーミングに声をかける。
「ホーミング、地図を出せ」
「ほれ」
正面を軽く指で弾くと、机の中央に世界地図が広がった。
カグラが指で指すと、指された部分が赤く光る。
「現在の世界地図と、ディーンの感知で読み取ったアルカナの契約者の動向だ。赤くなっているのが契約者のいる場所。海や空を渡って本土に集まってきている」
「残りは岸波斑鳩女子学園の二人と数名の放浪者じゃ。隠者の能力で隠れているつもりじゃろうが、ディーンの目は誤魔化せまいよ」
「それでここが魔闘大会が開かれる闘技場だ」
闘技場の場所は本土の中央、ぽっかりと開いた穴のようになっている湖に建設されている。
「周りは宿泊施設と商業施設で囲まれている。こんな所で騒ぎを起こされたら民間人も巻き込む。早急に策を考えねばな」
「じゃあ意見ある人、はい天羽!」
「えっ、俺!?」
手を挙げてもいないのにいきなり指されたが、天羽は冷静に考えて言葉を並べる。
「……二十二の力を一つに揃えないと世界は現れません。そして、世界の本体はディヴィアント学園の地下にいます。地下鉄とかは走っていますか?」
「ホーミング、路線図だ」
「ほい」
再度指で弾くと地上と地下の路線図が世界地図の本土と重なる。
「ディヴィアント学園の場所は?」
「ここだ」
カグラが指を指した所に青い印が表示される。
場所としては本土の最北端。
陸地はあるが時間によって陸地が海に飲まれるので船か飛行機でないと行けない。
そして、学園間移動用地下鉄道はここにもあった。
ちょうど路線が学園の下で止まっているのだ。
「ダグラスは地下鉄に運ばれるでしょう。そして、まずは皆さんが会っているダグラスが誰なのかを突き止める必要があります」
「レイシスから聞いておる。二人同一人物がいると聞いた時は驚いたが、月の能力なら可能じゃな。じゃが、そうなると儂らの戦う相手は三学園じゃ」
「……それは、どういう?」
最悪の事態を考えるべきだった。
アルカナの契約者は全員が放浪の身ではない、玄徳のように学園に所属している人もいる。
なら、それは生徒でも同様なのだ。
「岸波斑鳩女子学園の赤城波奈、月の契約者じゃよ」
「え……」
天羽は全身から力が抜けた。
まさか、岸波斑鳩女子学園の生徒が月の契約者だったなんて……
ダグラスが二人いる事は雄山は知らない。
そして、自分の生徒がもし本当に敵対する学園のスパイだったとしたら?
「江倉さんたちが危なっ……!」
『ガツンッ!』
「いっで……!」
天羽の行く手に壁が出現し、思いっきり顔をぶつける。
「落ち着け、まだ敵と決まった訳ではあるまいよ」
「……はい」
壁が消え、座った天羽の右手を優しくフェルンは握る。
「大丈夫です。まずは天羽さんの意見を聞かせてください」
「そう、だな……なら……」
息を整え、天羽は口を開く。
「死神の契約者であるユウエンという人はどこにいますか? フレス曰く、この人物が重要との事です」
「ここじゃ。まだ離島から移動していないようじゃな」
赤く光る所は北にある外国の離島だった。
「この人に会いに行くのは可能ですか?」
「「……」」
カグラとホーミングが沈黙し、数秒経ってホーミングが話す。
「ユウエンは自分の意思とは関係なく周りの生命を食らう。そして、アルカナの契約者の中で唯一、顕現を自在に使える能力者じゃ。会いに行った所で殺されてしまうじゃろうな」
「顕現とは、何ですか?」
「その名の通りじゃよ。ユウエンは死神を呼び起こす事が出来る」
「もしかして……」
と、天羽は岸波斑鳩女子学園の出来事を思い出す。
あの時、俺の後ろに現れた審判、あれが顕現という事か?
その際は直ぐに消えてしまったが、もしあの力を自分の思うように使えるなら能力者としては格上だ。
「俺、一度やった事があります」
「レイシスから聞いておる、一瞬だけだったようじゃがな。あの力を思うように使えるのじゃ。儂が戦っても勝率は低い」
「そんなに死神は強いんですか?」
「死神の力も、ユウエン自身の力もな。書物によれば、死神は契約者の恨み、悲しみ等の負の感情が高い者にしか契約する事が出来ん。ユウエンの過去に何があったのか、もう語れる者は全員殺されてしまった。そして、ユウエンは離島で一人暮らしておる」
「……」
「じゃが」
と、ホーミングは髭を触りながら続ける。
「お前さんの審判なら、対話する事が可能かもしれぬ」
「もしかして、ロイゼのように?」
「そうじゃ。お前さんが幽霊の少女に能力を託されたように、死という概念そのものを捻じ曲げてしまうほどの力が審判にはある。審判にとって、死など状態にしか過ぎないのじゃろうな」
「天羽さんに死ねと言うのですか!?」
いきなりフェルンが声を荒げる。
それに対しホーミングは落ち着いて話す。
「審判は命を留める力がある、ユウエンと対話する上でそれは絶対条件じゃ。麗城を死なせない為に力を利用するんじゃ、最悪の場合も考えてな。行く時は儂らも同行する」
「す、すみません……」
「相方を大事にする気持ちは重要じゃ。儂も悪い言い方をしたな」
下がるフェルンを見て天羽は続ける。
「ユウエンに会って協力を仰ぐか、赤城さんに会ってダグラスの事を聞き出すか……」
「安全に行くなら、赤城に会ってからユウエンに会う事じゃな。魔闘大会が始まるまで……いや、始まってもユウエンはしばらく動くことはなかろう」
「なら、ホーミングさんの言う通り赤城さんに会いに行きましょう」
「私も一緒に行きます。何かあった際に、対抗出来る人は必要でしょう」
「そうじゃな」
「ああ」
雄山が敵に回った際に、対抗出来るのは同じ七竜王の契約者かそれ以上の実力者となる。
フェルンの言葉の裏を読み、ホーミングもカグラも頷く。
「儂とカグラは学園周辺で待機しよう、ニヴィンとでも遊んでいるわい。その方が下手に手出しは出来まいよ」
「俺は二人を送る役だな」
「また光速の旅か……」
「……」
嫌な顔をする二人にカグラとホーミングは笑う。
「そんな顔すんなって! 何回かやれば慣れるもんだ」
「儂の転移魔法では天羽を送る事は出来んからの。経験を積むんじゃな」
「それじゃ、まずは岸波斑鳩女子学園の赤城波奈に接触しダグラスの事について聞き出す!」
「「はい」」
「うむ」
そう言うと鉄檻が消滅し、すぐ近くに次元の狭間が出現する。
そこから出ると先ほどの部屋に戻った。
「おかえりー!」
「おう、ありがとなチェイム!」
「えへへー」
チェイムの頭を撫で回し、ディーンがカグラに聞く。
「方針は?」
「まずは岸波斑鳩女子学園だ、赤城に会いに行く」
「……学園の甘味処にいる。貝塚と食事中のようだ」
「了解。それじゃ行くぞ、二人とも!」
「「……!」」
二人は互いに頷き、カグラ、ホーミングと共に入り口へ向かう。
「お気をつけて」
四人の背中に、フェティーは頭を下げて学園に帰還した。




