操り人形の力
Dブロック十五回戦。
魔素と傷を完治したナンシーと瑠璃子は対戦前の控室で準備運動をしている。
「これに勝ったら温泉旅行デース! 最初から飛ばすよ瑠璃子!」
「そうですね、文字通り飛ばしてあげますよ」
「え、物理的に飛ばそうとしてル?」
「はい」
冷静に返す瑠璃子に驚きの表情を見せるが、珍しく瑠璃子に笑顔が出る。
「ふふ。半分本気で半分冗談ですよ」
「……もー! でも、勝つために必要なら飛ばして良いからネ」
「はい、そのつもりです」
「失礼致します。ナンシー様、宮本様、試合開始五分前となりました。試合会場へ入場をお願い致します」
スーの案内で試合会場に入り、腕組みをして威圧している竜王我牙と、対して無関心そうに二人を見る天草蛍がいた。
「相手は一年生。だが油断すんなよ」
「うん、そうだね」
「やるよ、瑠璃子!」
「ええ、ここまで来たら優勝しましょう」
そして、試合が始まる。
『Dブロック十五回戦、試合開始』
「我が元に現れよ、望むのは聖なる双剣、スイレン!」
魔法陣から出てきたスイレンを握り、我牙に一撃を入れようとしたところで異変に気が付く。
「あれ、二人は?」
「後ろです!」
瑠璃子の咄嗟の判断により、修正でナンシーを動かした。
見ると後ろにはマフラー付きガントレットを装備した我牙と、その肩に手を置く蛍がいる。
「いつの間ニ!? でも、おりゃ!」
振り向いて攻撃を当てようとするが、瞬きした瞬間にまたも二人が消える。
「またイナイ!?」
「こっちです!」
見ると瑠璃子の背後に二人がおり、マフラーから炎を出してとてつもない速度でブローをかます。
瑠璃子とナンシーは我牙たちの瞬間移動に驚いているが、一番驚いているのは我牙たちだった。
「なんで俺たちの位置が分かるんだ!?」
「そういう能力なんでしょ」
そんな会話をしているうちにまた二人が視界から消える。
「今度はドコッ!?」
「上です!」
見上げると青い炎をマフラーから出しながらナンシーに殴りかかる。
「おらぁ!」
「危なっと!」
『ガキンッ!』
瑠璃子の修正で軌道を逸らし、着地寸前にマフラーへ一撃を叩きこむ。
するとマフラーに穴が開き、一瞬爆音が鳴り響いたが、二人は音と共に消える。
「音は聞こえるけれど、二人がイナイ」
「いない訳ではなく、意識が消えているだけのようです、よっ!」
会話している瑠璃子を我牙たちは攻撃し、その瞬間を見るもやはりまた消えてしまう。
「どういう事?」
「そこら辺の石に関心を持たないように、竜王さんたちにも私たちの意識が行ってないんです。これは天草さんの能力でしょう、ねっ!」
「くそったれが!」
攻撃を回避され我牙の機嫌がどんどん悪くなる。
そして、瑠璃子の予想は的中した。
「あ」
「……おいっ!」
修正で蛍の進行方向を逆転させ我牙から離すと、ナンシーにも我牙が見えるようになった。
「見つけたネ!」
「なら力の勝負だ!」
高速で繰り出されるブローをスイレンでいなしながら、確実に一撃一撃とマフラーに攻撃を与える。
その度に爆音が鳴り響き、やがてマフラーが爆発してしまう。
「くそっ!」
「もらった!」
スイレンは我牙に通り、胸を切った瞬間に機械音声が宣言する。
『竜王我牙、致命的な一撃。戦闘離脱』
「こうさーん」
『敗北宣言。勝者、ナンシー・ハーホン・ヴィクトリア、宮本瑠璃子!』
蛍のやる気のない敗北宣言で試合は終了。
そして、学園内予選が全て終了し、校内放送が流れる。
『ピンポンパンポーン』
『学園内予選が全て終了した。魔闘大会出場者は、Aブロック、麗城天羽、フェルン・ヴァリオス。Bブロック、高橋哲、守屋修吾。Cブロック、木崎葵、道後夢。Dブロック、ナンシー・ハーホン・ヴィクトリア、宮本瑠璃子。以上の八名だ! まさか一年生が二組も本選出場するとは予想外だ。本選でどんな試合を見せてくれるのか楽しみだな。この八名には来る本選前に、高級温泉旅館でしっかりと休養してもらう。本選の優勝者には、現実世界で叶えられるならどんな願いでも叶える権利が貰える。そして、それを手にするには痛みや苦しみも伴うだろう。本選は予選のように甘くはない、皆、覚悟して臨めよ? 以上だ!』
『ピンポンパンポーン』
「やったね、瑠璃子!」
「はい、勝ちました。本選でもこの調子で行きましょう」
教室に帰る二人を待っていたのは、同級生たちの喜びだった。




