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普通の学園生活って何ですか?  作者: 有木千夏
第四章 『学園内予選』
80/90

操り人形の力

 Dブロック十五回戦。

 魔素(エナ)と傷を完治したナンシーと瑠璃子は対戦前の控室で準備運動をしている。


「これに勝ったら温泉旅行デース! 最初から飛ばすよ瑠璃子!」

「そうですね、文字通り飛ばしてあげますよ」

「え、物理的に飛ばそうとしてル?」

「はい」


 冷静に返す瑠璃子に驚きの表情を見せるが、珍しく瑠璃子に笑顔が出る。


「ふふ。半分本気で半分冗談ですよ」

「……もー! でも、勝つために必要なら飛ばして良いからネ」

「はい、そのつもりです」

「失礼致します。ナンシー様、宮本様、試合開始五分前となりました。試合会場へ入場をお願い致します」


 スーの案内で試合会場に入り、腕組みをして威圧している竜王(りゅうおう)我牙(がが)と、対して無関心そうに二人を見る天草蛍がいた。


「相手は一年生。だが油断すんなよ」

「うん、そうだね」

「やるよ、瑠璃子!」

「ええ、ここまで来たら優勝しましょう」


 そして、試合が始まる。


『Dブロック十五回戦、試合開始(バトルスタート)

「我が元に現れよ、望むのは聖なる双剣、スイレン!」


 魔法陣から出てきたスイレンを握り、我牙に一撃を入れようとしたところで異変に気が付く。


「あれ、二人は?」

「後ろです!」


 瑠璃子の咄嗟の判断により、修正(リバイス)でナンシーを動かした。

 見ると後ろにはマフラー付きガントレットを装備した我牙と、その肩に手を置く蛍がいる。


「いつの間ニ!? でも、おりゃ!」


 振り向いて攻撃を当てようとするが、瞬きした瞬間にまたも二人が消える。


「またイナイ!?」

「こっちです!」


 見ると瑠璃子の背後に二人がおり、マフラーから炎を出してとてつもない速度でブローをかます。

 瑠璃子とナンシーは我牙たちの瞬間移動に驚いているが、一番驚いているのは我牙たちだった。


「なんで俺たちの位置が分かるんだ!?」

「そういう能力なんでしょ」


 そんな会話をしているうちにまた二人が視界から消える。


「今度はドコッ!?」

「上です!」


 見上げると青い炎をマフラーから出しながらナンシーに殴りかかる。


「おらぁ!」

「危なっと!」

『ガキンッ!』


 瑠璃子の修正(リバイス)で軌道を逸らし、着地寸前にマフラーへ一撃を叩きこむ。

 するとマフラーに穴が開き、一瞬爆音が鳴り響いたが、二人は音と共に消える。


「音は聞こえるけれど、二人がイナイ」

「いない訳ではなく、意識が消えているだけのようです、よっ!」


 会話している瑠璃子を我牙たちは攻撃し、その瞬間を見るもやはりまた消えてしまう。


「どういう事?」

「そこら辺の石に関心を持たないように、竜王さんたちにも私たちの意識が行ってないんです。これは天草さんの能力でしょう、ねっ!」

「くそったれが!」


 攻撃を回避され我牙の機嫌がどんどん悪くなる。

 そして、瑠璃子の予想は的中した。


「あ」

「……おいっ!」


 修正(リバイス)で蛍の進行方向を逆転させ我牙から離すと、ナンシーにも我牙が見えるようになった。


「見つけたネ!」

「なら力の勝負だ!」


 高速で繰り出されるブローをスイレンでいなしながら、確実に一撃一撃とマフラーに攻撃を与える。

 その度に爆音が鳴り響き、やがてマフラーが爆発してしまう。


「くそっ!」

「もらった!」


 スイレンは我牙に通り、胸を切った瞬間に機械音声が宣言する。


『竜王我牙、致命的な一撃(キルアタック)戦闘離脱(リタイア)

「こうさーん」

敗北宣言(デフィート)勝者(ウィナー)、ナンシー・ハーホン・ヴィクトリア、宮本瑠璃子!』


 蛍のやる気のない敗北宣言で試合は終了。

 そして、学園内予選が全て終了し、校内放送が流れる。


『ピンポンパンポーン』

『学園内予選が全て終了した。魔闘大会出場者は、Aブロック、麗城天羽、フェルン・ヴァリオス。Bブロック、高橋哲、守屋修吾。Cブロック、木崎葵、道後夢。Dブロック、ナンシー・ハーホン・ヴィクトリア、宮本瑠璃子。以上の八名だ! まさか一年生が二組も本選出場するとは予想外だ。本選でどんな試合を見せてくれるのか楽しみだな。この八名には来る本選前に、高級温泉旅館でしっかりと休養してもらう。本選の優勝者には、現実世界で叶えられるならどんな願いでも叶える権利が貰える。そして、それを手にするには痛みや苦しみも伴うだろう。本選は予選のように甘くはない、皆、覚悟して臨めよ? 以上だ!』

『ピンポンパンポーン』

「やったね、瑠璃子!」

「はい、勝ちました。本選でもこの調子で行きましょう」


 教室に帰る二人を待っていたのは、同級生たちの喜びだった。

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