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普通の学園生活って何ですか?  作者: 有木千夏
第四章 『学園内予選』
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再誕の王

 Aブロック決勝戦。

 試合会場では天羽、フェルン、京子、明里が対峙している。


「一年生なのに決勝に来るなんてすごいね。ま、君たちの能力なら納得だけれど」

「肯定。苦戦を強いられると予想します」


 天羽たちは慢心せずに言葉を返す。


「能力の使い方は先輩たちの方が上でしょう。でも、勝たせてもらいます」

「私たちには、目的があるので」

「そう」


 そして、時間が来る。


『Aブロック十五回戦、試合開始(バトルスタート)

「来なさい、死楽(しらく)

「攻撃します」

火炎拳(かえんけん)赤乃岩戸(あかのいわと)!」


 両者攻撃の構えを取り、明里がフェルンに特攻する。

 ブローを両手で止めると、ガントレットが白色に輝く。


「……!」


 異常事態を感じた明里は後退し右腕を見る。


「損傷率80%。高温によるオーバーヒートの為、回路に損傷が出ました」

「動ける?」

「肯定。武器として使用、脚力で威力を補います」


 一歩踏み出すと一瞬でフェルンとの距離を詰め、顔面に右腕が届く。


「アルクク!」

「下がって」

「了」


 フェルンが炎の渦で隠れる前に、明里は地面を蹴り再び後退する。


「攻撃不能。麗城を……」

「いや、そっちは私がやる」


 柄に手をかけながら天羽に近づく。


「何もしないんだね。じゃあ、行くよ」

「……!」


 目を少し瞑り開くと、抜刀の構えを取る。


「似の型・断」


 一歩踏み出し刃が天羽の首に当たるその時、京子の体が後ろへ引っ張られる。

 京子は何が起きたのか解らず、刀を鞘に仕舞い体勢を立て直す。


「私の刀が届かなかった?」

「多分、何をしても俺には届かないですよ」

「遺血の型・切」

「無駄だっ!」


 切りかかるがやはり体が後ろへと引っ張られてしまう。


「なるほど。じゃあ、これはどう? 惨の型・斬」


 抜刀すると、天羽には刀が左・右・上の三方向から襲ってくるように見えた。

 修正(リバイス)で刀の軌道を変えようとするが、一つではなく三つとも変えないといけないことに気が付く。

 なぜなら、京子の体を後ろへと引っ張っても中央の一振りしか変らず、他の二方向から攻撃が来ているのだ。

 範囲解析(サードアイ)で位置を確認すると、京子は三人に分裂していた。


「マジかっ……なら!」


 軽く床を蹴ると自分の動く軌道を後ろに大きく伸ばし緊急回避する。


「自分も動かせるの? 面倒だね」


 鞘に刀を入れて呟くと、横目で明里を見る。


焔王鎖紅(えんおうさこう)!」

「回避します」


 鎖のように飛び出した炎の柱は、走る明里を追尾して地面を激しく燃やしながら着弾する。


「相性悪いね。早くこっちを片づけないと」

「そんな余裕ぶってられますかね!」


 天羽は前方に白と金の多重魔法陣を展開する。


「約束されし勝利の槍よ、今、(なんじ)を長き眠りから解放し、(ふたた)び我らに勝利をもたらせ。現れよ、幻槍・グングニル!」

「……これはヤバいかも」


 金の槍、グングニルが出現すると、発射と同時に京子は小さく息を吸い込む。


「死の型・絶」


 一閃、抜刀するとグングニルが左右に割られる。

 割られた破片は壁に激突し天羽の手元に戻らず光となって消えた。


「グングニル、が……」

「死の型を出したのは昇格戦以来。君、強いよ」


 唖然としている隙に京子は一歩踏み出し天羽を間合いに入れる。


「でも、まだまだだね」

「ぐっ……!」


 鞘でみぞおちに突きを食らい、立てはするが苦しそうに腹を抑える。


「こんな程度で固まっていたらだめ。すぐに次の動きに入らないと」


 そう言って再び距離を詰め、野球ボールを打つかのように鞘で天羽を横から殴る。


「がっ……!」

「天羽さん!」

「構うなっ!」

「好機。突撃します」


 フェルンが天羽を見た瞬間に明里はフェルンへ突撃する。


焔王弾紅(えんおうだんこう)!」

「回避します」


 両指で紋章を弾き、赤い弾丸が十発放たれると明里は素早くかわし、使い物にならない右腕で殴りかかる。


「アルクク!」


 それを両腕で受け止めたフェルンはガントレットを白く輝かせ、手首部分をドロドロに溶かした。

 溶けた断面からはケーブルや小型部品が赤く燃えて見える。


「右手首損傷率100%」

「あー、やられたか。じゃあ、私が竜人の相手するから、あの子の相手しておいてよ」

「了」


 初期位置に戻った二人は作戦会議をして、明里は天羽に、京子はフェルンに近づく。

 明里が天羽に左腕でブローを与えようとしたその時、地面から木の枝が生え明里に絡みついた。


「……分析不能。予想外の出来事が起きました。撤退……撤退……行動不能」

「何あれ?」


 木の枝は複雑に絡み合い、明里の動作を完全に束縛した。


「こんな程度で固まっていたらだめ、なんじゃないですかっ!」

「……遺血の型・切」


 京子の足元から生えた木の枝を飛んで回避し、そのまま技で全部切り落とす。


「君、竜人なの?」


 聞いた天羽の胴には、金と緑の根で絡みついた鎧のようなものを装備していた。


「一時的な能力ですがね。樹木鎧(じゅもくがい)翠乃脈動(みどりのみゃくどう)! 樹王束緑(じゅおうそくりょく)!」


 名前を呼ばれ足元に緑の紋章が出現すると、そこから数多の枝が生え京子を襲う。


「はぁ、仕方ない」


 溜息をついた京子は構える。


遺血(いち)(わざ)・切除」


 抜刀すると高速で刀を動かし、枝を一つも残さず切り落とす。


焔王咆紅(えんおうほうこう)!」


 納刀した瞬間を見てフェルンが技を繰り出すが、紋章から放たれる白い光が消えると京子は少し火傷をした程度で刀を構えていた。


「倒せなかった……?」

「マジかよ……」

「それはこっちのセリフ」


 京子は納刀し柄に手をかける。


「型を全部見せただけでなく、(わざ)まで出す羽目になるなんてね。本気出してない訳じゃないけれど、出し惜しみは出来なくなったかな。もう、殺すつもりでやるから」


 京子から出るオーラが一気に冷たくなる。

 危険と思った天羽は紋章からさらに枝を出し行動を妨害しようとするが、京子は枝を的確に踏みながら二人と距離を詰める。


「似の(わざ)・断頭」

『グルォオアアア!』


 技が放たれるその瞬間にフェルンの紋章からアルククが声を出し、二人を超高温の火柱で守った。

 距離があったのにも関わらず、刀の刃は先端が少し溶けている。


「アルクク?」


 フェルンが問いかけるとアルククは答える。


『あの小娘の刃、届けば首が切れていた』

「それ、本当なの……?」

『嘘をつく理由などあるか、小娘よ?』


 腕の紋章に聞いていると、京子は溶かされた刀を見て驚く。


「この刀溶かせるの? 厄介すぎる、というより勝ち目ないじゃん」

「肯定。残り時間はわずかです」

「あれっ!?」


 いつの間にか京子の隣に立っている明里に気が付き、天羽は束縛していたはずの枝を見る。

 見ると枝は全て切られていた。


「あの瞬間に枝を切ったのか? この距離だぞ」

「自分の固定概念を押し付けないで。常に最悪の状態を考えなよ」


 冷静に京子は話し、一回刀を横に振ると溶けた刃は修復され元に戻っていた。


「天羽さん」

「ああ、こっちも出し惜しみはしない。ゼビルズ、良いか?」

『無論、力ヲ貸ソウ』

「アルクク」

『ふん。我の力、存分に使うが良い』


 紋章から聞こえる声に二人は頷き、京子たちを見る。


「まだ何か見せてくれるの?」

「ああ、とっておきをな!」

竜人化(ドラグナー)の力、見せてあげます!」

「「双竜王(ツインドラゴン)、竜人合体!」」


 二人の前に出現した赤と緑の紋章が重なり、二人の装備が合体する。

 目の色は赤と緑のオッドアイとなり、フェルンと天羽で左右が逆転している。

 装備もガントレットは右手がフェルン、左手が天羽に装備されており、白いラインに加えて緑のラインも入った。

 ガントレットから胸にかけて金と緑の枝が生えており、天羽の付けていた鎧が分かれている。


「『竜人王(ドラグナー)、麗城天羽!』」

「『竜人王(ドラグナー)、フェルン・ヴァリオス!』」


 アルククとゼビルズの声が混ざり、明里は二人を冷静に分析する。


「戦力分析……規格外、測定出来ません」

「だろうね。でも、やるよ」

「了」


 二人が走って距離を詰めると、天羽とフェルンは同時に赤と緑の紋章を出し正面を殴る。


「『焔樹王(えんじゅおう)嵐砕葉(らんさいは)!』」

遺血(いち)(わざ)・切除」


 紋章からは二人の視界を埋め尽くすほどの白い炎と、無数の緑の葉が螺旋状に発射され、京子の(わざ)で切りながら進むも刀の損傷が激しくついには二人とも壁まで押し飛ばされてしまった。

 京子の刀は鍔より上が溶けており、明里の体は黒い煙を至る所から上げていた。

 そして、


致命的な一撃(キルアタック)勝者(ウィナー)、麗城天羽、フェルン・ヴァリオス!』


 勝利が決まり、装備を解くと二人とも後ろへ倒れてしまう。

 天羽の審判(ジャッジメント)である程度は制御していたが、それでも反動が大きい。


「はぁ、はぁ……勝ったな……」

「……はい、勝ちました」


 お互いの顔を見て寝ながら喜び、救助班の人たちが入って来ると四人を総合病院へ担架で運んだ。

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