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普通の学園生活って何ですか?  作者: 有木千夏
第四章 『学園内予選』
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圧力操作《プレスドライバー》

 学内予選3日目。

 Aブロック十三回戦の試合会場には、すでに準備万端の天羽とフェルン、そしてオールバックのヴィン・エールと前髪の右側を青に染めている荒田蒼々が睨み合っている。


「君たちはやっぱり、というか……勝ち上がって来るのは必然か」


 呆れたようにヴィンは言うと、蒼々も青い前髪をいじりながら続ける。


「俺たちが勝つ確率はほぼ皆無。でも、やるしかないだろ」

「そうだな。勝っている点と言えば、こっちの方が年上だ。能力の使い方は俺たちが上だろう。慢心せずにやるぞ」


 ヴィンのまっすぐな視線に二人はお互いの顔を見て頷く。


『Aブロック十三回戦、試合開始(バトルスタート)

「行きます! 火炎拳(かえんけん)赤乃岩戸(あかのいわと)! 焔王(えんおう)……!」

「潰れろっ!」

『ズシンッ!』


 試合開始直後に竜王器(ドラゴニックウェポン)を装備し、正面に出た紋章を殴ろうとした時、二人は何かに押しつぶされる。


「ぐっ……!?」

「な、に……?」


 上を見ると大きな青い魔法陣があり、蒼々が人差し指と中指を立てながら前に振り下ろしていた。

 二人にはヴィンと蒼々の体が曇って見えている。


「動け、ない……なら……!」


 二人とも地面に突っ伏した状態だが、辛うじて指の関節程度ならまだ動かせる。

 フェルンは右の拳を握り小さな紋章を展開すると、人差し指を紋章に向かって弾く。


焔王、弾紅(えんおうだんこう)……!」


 赤い弾丸が閃光の如く蒼々に放たれると、予想外の攻撃に魔法陣を解いてしまった。

 その隙を逃がすまいと二人は立ち上がり距離を詰める。

 しかし、怯んだ蒼々の前にヴィンが立ちはだかり、左目の前でカメラのレンズのように動く小さな黄色い魔法陣が止まると、左右に腕を広げて大量の魔法陣がヴィンの後ろに展開される。


「目標確認、一斉掃射!」


 キラリと光った次の瞬間、魔法陣から光の弾丸が二人に発射されたが、天羽は手を左右に大きく振りその弾丸を全て修正(リバイス)で明後日の方向へと受け流す。


「遠距離攻撃は効かないですよっと!」

「なにっ……!?」


 壁に当たった弾丸は消滅し、間近に迫ったフェルンの前に紋章が出現する。


焔王咆紅(えんおうほうこう)!」

「させるかっ! 飛べ!」


 体勢を立て直した蒼々が紋章の前に魔法陣を展開し、殴ろうとしたフェルンと一緒に天羽も一気に後ろの壁まで突き飛ばした。


「ぐっ……!」

「フェルン……!」


 蒼々の能力圧力操作(プレスドライバー)は、魔法陣が向いている向きの空気圧を何十倍にも上げる能力。

 対象に魔法陣が触れる訳ではないので、天羽の記憶奪取(メモリーセイザー)は効果を発揮しない。

 そしてヴィンの能力光弾(こうだん)は、左目でロックオンした標的に無数の光の弾丸を当てる能力。

 ロックオンまでには多少の時間が掛かるので、フェルンの攻撃が来なければ立ち上がる前に攻撃に入るはずだった。


「目標再確認、一斉掃射!」


 再び魔法陣が大量展開されると、壁から動けない二人に向かって弾丸が迫る。

 が、やはり天羽の修正(リバイス)の能力の前では遠距離攻撃は無力に等しい。

 弾丸は二人に当たらず、今度は軌道を変え蒼々に向かって放たれる。

 ヴィンも撃ち落とそうとするが、それをしてしまったらまた天羽に軌道を変えられてしまうと解った二人は素直に真横へ避ける。


「手の動作は要らないのか、騙されたな」

「アルカナの能力とバカみたいな威力の攻撃、あいつの能力は何個あるんだ!?」

「しかし、あの少女の攻撃は恐らく紋章にガントレットが触れないと攻撃を出せない。ならお前の能力でずっと抑えていれば……」

『ブオッ!』

「「!?」」


 肌に焼け付く熱波に驚き視線を戻すと、全身に青白い炎を纏い竜人王(ドラグナー)となったフェルンが溶岩の翼を羽ばたかせながら飛んでいた。


「『作戦会議は終わったか?』」

竜人王(ドラグナー)……いや、それよりも、この圧力の中で飛べるのか!?」

「『我を落としたくば、この星の核と同じくらいでないとな。こんなもの、地上を飛んでいる時と変わらぬぞ?』」

「化け物かこいつらは!?」

「目標確認、一斉掃射!」

「『くだらん。焔王弾紅(えんおうだんこう)!』」


 天羽の修正(リバイス)の事を忘れ無数の弾丸をフェルンとアルククに浴びせるが、展開した紋章から放たれる赤い弾丸に全て撃ち落とされた。


「全て撃ち落とされた!?」

「『終いだ。焔王咆紅(えんおうほうこう)!』」


 紋章にガントレットを当てると、すさまじい勢いの白い光が二人に放たれる。

 蒼々も最大出力の空気圧で応戦するが、その威力には遠く及ばなかった。

 幸いにも二人に当たる際には威力は減少しており、体中が焼け焦げる程の火傷は負わなく試合は終了した。

 竜人王(ドラグナー)を解いて地上に降りると、フェルンは少しふらついていた。


「大丈夫か?」

「……はい。今回は短かったので、ただ、連続は無理ですね」

「一人で歩けるか?」

「はい、大丈夫です」

「そうか」


 天羽とフェルンは応急処置をされて担架で運ばれる二人を見送る。


「化け物、ですか」

「そうだな」


 その言葉は恐れられる意味で使われる事が殆どだが、二人には誉め言葉のように聞こえていた。


「天羽さんの隣に立つには、竜人王(ドラグナー)の状態を長時間維持出来るようにならないとですね」

「あいつらが順調に勝てば、次の相手は変身のスペシャリストだ。宝石の力は不明点が多いし、獣の能力に至っては伝説上の獣にまで変身出来る。竜人王(ドラグナー)を使っても、想像以上に厄介な相手になると考えないとな」

「でも負けられません」

「ああ、勝つぞ。ロイゼの為、世界の為にもな」


 帰り道の廊下で、二人は拳をぶつけた。

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