つかの間の休息
準決勝まで進んだ四組の一年生、天羽、フェルン、ナンシー、瑠璃子、紅花、エレーナ、朱里、竜二の八人は、二日目の全試合終了後の夕方に食堂へ集まって話をしていた。
「フェルンちゃんはもう大丈夫なノ?」
「はい。病院で寝たら良くなりました」
Aブロック十回戦の試合でフェルンは竜人化をし、総合病院で休息をとっていた。
体長が回復してきたためリリエルも大丈夫と判断し、待合室で待つ天羽の元へ帰り、食堂へ連れてこられたのだ。
瑠璃子は集まった面々を見ながら小声で、
「一年生の私たちが準決勝に行けるとは、しかも四組も……」
「このまま勝ち上がって優勝してやる。な、エレーナ?」
「ええ、優勝してみせますわ」
「ノーノー、優勝するのは私たちデース!」
「いいや、あたしたちだね!」
「「……!」」
試合前日から電流が走る二人を置いて朱里が天羽に聞く。
「で、何で私たちは集められたのよ?」
「ああ、それは……」
「私が麗城君に頼んだんだよ」
固い靴の音と共に来たのは、咲を連れたレイシスだった。
咲が一礼をすると、レイシスは空いているテーブルから椅子を持ってきて誕生日席に座る。
「一年生の君たちが準決勝まで進んだこと、とても驚いているよ。毎年一組はここまで勝ち進むものなんだけれどね、四組も勝ち上がったのは学園創立以来初めての事なんだよ。だから、明日から始まる準決勝、決勝戦の前に祝ってあげようと思ってね」
「気が早いよ、レイシス」
「そうかい? でも、シェフたちには事前に連絡して料理を作ってもらっているからね、是非とも食べてほしいんだ!」
『パチンッ!』
指を鳴らすと、お手伝いのおばちゃんたちが沢山の料理をテーブルに運んできた。
鳥の丸焼き、刺身の盛り合わせ、サラダ等々、普段は絶対に食べないようなものが出てきた。
「ワーオ!」
「見慣れない食べ物がいっぱい……」
見惚れるナンシーとフェルンに口の角を上げ、レイシスはナイフとフォークを使って鳥の丸焼きを切り分けて各人の皿に盛りつけていく。
「さぁ、沢山食べてくれ!」
「「「いただきます!」」」
豪華料理を黙々と食べる八人を見て満足そうにレイシスは微笑む。
そして30分くらいしてようやく全ての皿が空になり、天羽、ナンシー、紅花はお腹をさすっている。
「満足してくれたようで何よりだ。決勝戦を勝ち上がったら、今度は高級温泉旅館だよ」
「そういや、ありましたね。凛堂が行きたがっていたな」
「忘れていたのかい……まぁ、本当の目的は魔闘大会の優勝賞品だろうからね」
その言葉に皆が思いつめたような表情を見せる。
「次は準決勝だ。Dブロックの試合ではナンシーさんと宮本さん、そして針城さんとエレーナさんのペアが当たるね。私の見立てではナンシーさんたちが有利に見えるけれど、実際どう思っているのか聞きたいな」
紅花は腕を組みながら答える。
「宮本の修正は天敵……というか、誰でも相手にはしたくない能力だろ。エレーナの弾を弾き返されるのが目に見えている」
「そうですね……対策が無い訳ではないですが、正直一か八か、といったところです」
弱気になる二人に対して、ナンシーは自慢げに口を開く。
「瑠璃子は私の剣も使えるから、攻防一体の戦術が取れマース! 負けるビジョンは見えまセーン!」
「慢心してはダメですよ。私だって自分の能力の限界がわからないのですから、最悪あなた一人で戦う事になるかもしれません」
「宮本さんの言う通り、慢心はダメだね。無敵の能力は存在しない、必ず弱点はある。針城さんたちが不利だとは言え、勝ち目はまだあると思うよ」
「その言葉……」
まさかのルネスが言っていた言葉に天羽がハッとした表情を見せている中、紅花とエレーナはお互いの顔を見て頷く。
「温泉旅行はどうでもいいが、魔闘大会に出場するために全力を出す。な、エレーナ?」
「最後まで全力で踊って見せますわ」
「エレーナちゃんたちがバレットダンサーなら、私たちはブレイドダンサーデース! 剣の舞を見せてあげマース!」
「勝手に私を巻き込まないでください。戦うのはそうですが」
「盛り上がっているね、良いよ良いよ」
にやけ顔で二組を見た後、目線を天羽たちに移す。
「麗城君、フェルン、そして畑槻さん、坂本君は、二組とも準決勝を勝ち上がったら決勝で当たる事になるけれど、意気込みとしてはどうだい?」
その言葉に朱里と竜二は顔を合わせて右手を振る。
「「無理」」
「ありゃりゃ……」
がくっという効果音が鳴るようにレイシスは首を小さく動かし質問する。
「本当に勝ち目が無いと思っているのかい? 確かに、麗城君はアルカナの契約者、フェルンは七竜王の契約者だ。弱気になるのも分からなくは無いが、最初から諦める必要も無いと思うが」
朱里と竜二は再び顔を合わせて姿勢を正す。
「竜二は魔素決壊から回復して、前試合を見たら分かるように強くなっています。私も宝石の力を何個か新しく引き出せるようになりました。麗城の能力は魔法陣が無いと能力を奪えないから、魔法陣を使わない私たちはそこの部分で言えば有利です」
「ただ、問題はフェルンさんです。竜装、竜人化、日が経つごとに七竜王の契約者らしい強力な武器を獲得しています。攻撃的な能力に特化しているフェルンさんは脅威です。いつかの試合で戦われた相手みたいに、見下す事なんて出来ません。俺の獣身化でどこまで対抗出来るか……」
「それを聞いて二人はどうだい?」
投げかけに天羽とフェルンは答える。
「今の俺には、奪った能力を使えるくらい沢山の魔素がある。自分で言うのも何だが、俺が使える能力をフル活用すれば攻守一体の戦術が取れる」
「でも、私たちはそれをあまり見せたくありません。対策を取られると不利になるからです。竜装はともかく、竜人化を見せてしまったのは大きなダメージになっています。今まで見せた戦術だけでどれだけ相手に出来るか、それが勝利の鍵になっていると思っています」
「うんうん……!」
レイシスは満足そうに立ち上がり口を開く。
「皆、各々作戦を真面目に考えているようだね! 結局強い能力者が勝ち上がって本選に出る、とは限らない。自分たちの能力を知り、そしてどう活用していけば良いのか考える……魔闘大会はそれのぶつかり合いだ。本選の出場選手が決まったら、他の学校の本選出場者のリストも公開される。その子たちが前回までに本選に出場していれば、学園に保管している戦いの動画もあるし好きに見てもらって構わない。残り二日の予選、気合い入れて頑張れよ!」
「「「はい!」」」
そうして、1時間ほどの前祝は終わり、若き四組は準決勝に進む。




