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普通の学園生活って何ですか?  作者: 有木千夏
第四章 『学園内予選』
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奮闘

 Bブロック二回戦、優斗、敏文VS角谷淳、田中徹の戦いは、圧倒的だった。

 敏文のテクニカルな動きに相手はついて行けず、さらに攻撃が全く当たらないため苛立ちを覚えた相手に、すかさず優斗の刀が猛威を振るった。

 初見殺しとは言ったもので、敏文の動きを封じるには練習試合で優斗が見せたように逃げ場を無くす他無いと思う。

 二人はかすり傷一つも負わずに勝利し、負けた相手はとても悔しがっていた。

 

 そうして迎えた昼休み。

 食堂に向かい食事を受け取ると、優斗たちがいるB組の皆が六人掛けの大テーブルで一緒に食事をとっていた。

 一緒に食事をとるか迷っていると、B組の皆がこちらに気付き敏文が手招きし、紅花、エレーナ、竜二は手を振っていた。

 フェルンたちと目を合わせると皆頷き、空いていた隣の大テーブルに座る。

 すわるや否や、敏文がラーメンを食べているナンシーに聞く。


「一回戦すごかったな。綾波も刀の使い手だが、ナンシーの剣技もかっこよかったぜ!」

「ありがとうございマース! ユートと敏文も圧倒的だったネ! くねくね動いて、ズバッと決める。瑠璃子、私たちもやってみまショウ!」

「食べるか話すかどっちかにしてください」

『もぐもぐ……』

「「食べるんかい・ですか!」」


 瑠璃子と敏文の突っ込みに皆が笑う。

 これでも学園内予選中だというのだから、和んだ雰囲気はとても新鮮だった。

 食事を食べ終えてクラスに戻ると、13時から始まるAブロック三回戦から三つ目、Cブロック三回戦に麻耶と鳴子が出場する。

 二人は時間前に教室を出て行き、教室には四人が残る。

 Bブロック三回戦が終わりモニターを見ていると、麻耶、鳴子、そして対戦相手の木崎葵、道後夢が入場する。


「お二人、大丈夫でしょうか?」

「どういう意味だ?」


 フェルンはモニターを見ながらそんなことを呟き、心配そうな声で続ける。


「黒髪の方、木崎さんですが、この学園でも五本の指に入るくらい強いと前にレイシスから聞いたことがあります。能力は電気砲(ボルトカノン)。雷の如く放たれる電気砲はどんな装甲でも貫き、試合をするたびに強化加工をしている会場も穴だらけになります。一発に必要な魔素(エナ)は少ないらしく、休みの無い連続攻撃は恐ろしいものです。接近戦が得意な凛堂さんたちには苦手な相手かもしれません。そして、もう一方の茶髪の方、道後さんは能力がわかりません」

「わからない?」

「はい。試合は木崎さんが一歩も動かずに全部終わらせてしまいますし、道後さんが試合で能力を使用したところは私は見ていません」

「学園長からは何も聞いていないのか?」

「……その時の私は、それほど試合に興味がありませんでしたから。ごめんなさい」


 フェルンは首を振って否定した。

 この中で一番学園にいる年月が長いフェルンが言うのだから、一つ上の先輩という訳ではないだろう。

 であれば、魔闘大会にも出場経験があるのかもしれない。

 そんな人たちと初戦で交えることになるなんて……


『Cブロック三回戦、試合開始(バトルスタート)!』


 緊張が走る中、試合が始まった。


性能強化(エンハンス)、脚力上昇!」

『バキュン!』


 先に仕掛けたのは鳴子だ。

 足の血管がドクンと浮かび上がると、瞬きをした次の瞬間には葵の目の前まで右腕が届いていた。

 しかし、その腕は鋭い音と同時に弾かれる。

 片目を瞑る鳴子が左にくるりと回り葵を見ると、ちょうど顔横に紫色の魔法陣が浮かんでいた。

 その延長線上の壁には穴が開いており、白い煙が出ている。


性能強化(エンハンス)……」

「なる!」

『ババキュン!』

「ぐ……!」


 鳴子が能力を使おうとすると目の前に灰色の壁が現れ、しかし稲妻を纏った弾丸は壁を熱で焼きながら貫通し床にめり込む。

 そこまで見てようやく気が付いた。

 鳴子の右手、両足から血が流れているのだ。


「へぇ、鉄の壁ね。でも、もっと頑丈な壁じゃないと、私の弾丸は防げないぞ?」

「動ける!?」

「何とかねっ!」


 鳴子は素早く立ち上がり、狙いを変えて棒立ちの夢に向かう。


「させるとでも?」

『バババキュン!』

「ぐあっ!」

「なる!」


 足の複数個所から流血し、倒れ込んだ鳴子は立ち上がる事すら困難になってしまった。

 葵は見下すようにニヤリと笑い、魔法陣を複数展開しながら麻耶に敵意を向ける。


「次はあなただね。一人で私に勝てるかな?」

「やれるだけの事はやってみますけど」


 そう言って、麻耶は床に魔法陣を展開し、十字剣(クロスソード)を両手に構える。


「ふーん。なら避けてみてよ」

『バキュン!』


 麻耶めがけて放たれた弾丸は十字剣(クロスソード)で防ごうとするが、熱で焼かれた丸い穴が開き長い刃の部分が折れてしまう。


「なら、これはどう?」

『ババババババババ!』


 連続で放たれる弾丸に、十字剣(クロスソード)は木っ端微塵に壊された。


「まだ! 来なさい!」

「お望み通りに」


 無数に展開される魔法陣から弾丸が発射される。

 撃った魔法陣は消えては新しい魔法陣が生まれ、フェルンが言った通り休みの無い連続攻撃に恐怖を覚えた。

 麻耶は十字剣(クロスソード)を再び装備し攻撃をいなそうとするが、弾丸は貫通し壊れてしまう。


「葵っ!」

性能強化(エンハンス)、全筋力倍化!」

「まだ動けるのかよ……くたばりな!」

『バキュン!』


 葵は一瞬後ろを向き、夢に急接近するなるに撃つが外れてしまう。


「おらぁ!」

「夢!」

「あっ……!」


 夢はまるで戦いに慣れていないかのように、あっけなく鳴子の右ストレートを受けて倒れてしまう。

 がしかし、葵の攻撃が止まった訳ではない。


「このっ!」

『バババキュン!』

「ぐうぅ……!」


 弾丸は鳴子の腕と足を貫通し、その場に倒れて動けなくなる。


『斎藤鳴子、致命的な一撃(キルアタック)戦闘離脱(リタイア)


 機械音が鳴子の敗北を告げると、再び狙いが麻耶に向けられる。


「本当に一人になっちゃったね。どうする、敗北宣言する?」

「負けるにしても、ただでは負けませんから」

「あなたにまだやれることがあるとでも?」

「飛びなさい」

「は?」

『ズゴゴ……!』


 そう言うと、葵の足元には巨大な紫色の魔法陣が出現し、中から柱が生えてきた。

 咄嗟にその場を蹴って後方に着地すると、とても悔しそうに麻耶を見る。


「やっぱり、ありましたね。魔法陣」

「……」


 葵が離れた一瞬前、床には小さな緑色の魔法陣があったのだ。

 麻耶はそれを見逃さなかった。


「木崎先輩の能力は確かに強いです。でも、あれだけ強力な技を連射出来るなんておかしいと思っていたんです。なにせ私も形成系能力者(メイカー)ですから、物体を作るには多くの魔素(エナ)が必要だって分かっているんですよ。第三者からの魔素(エナ)の供給が無いと連射出来ない、その供給源はそこで倒れている道後さん、そうですよね?」

「あなた一年生でしょ? よくわかったね。でも、魔素(エナ)の供給が途切れたからと言って、撃てない訳ではない。対してあなたはもう魔素(エナ)が限界のはず。あれだけ大きな武器を何個も出していたらそうなるよね」

「ええ。だから、悔しいけれどここで敗北宣言をするわ。次に先輩方と戦う相手に有利な情報を残してね」

敗北宣言(デフィート)勝者(ウィナー)、木崎葵、道後夢!』


 機械音が試合終了を告げると、救護班が鳴子と夢に駆け寄る。

 それを見ていたモニター前の天羽たちは考察する。


「なるほどな。道後さんの能力は自分の魔素(エナ)を他人に渡す能力だったのか」

「木崎さんが動かなかったのは、供給する魔法陣の上にいないといけないからでしたね」

「ちなみにナンシーは一試合で何本まで剣を出せるんだ?」

「ウーン……物によるけれド、五本くらいまでカナ?」


 口に指をあてながら答えるナンシーに、何手の内明かしているんだというような顔をする瑠璃子を見て、なんだか申し訳ない気持ちになった。


『ガラリ』

「……」


 すると、教室のドアが開き、俯きながら麻耶が入ってきた。


「ごめんなさい。負けたわ」


 麻耶は深く頭を下げると、震えた声に天羽たちは駆け寄る。

 床には涙が落ちており、励ますようにフェルンとナンシーが手を握った。


「まるで歯が立たなかったわ……なるもしばらくは総合病院で入院しなくちゃだし、もっと私が強ければあんなことには……」

「相手はこの学園でも上位に入るほど強い方です。木崎さんのからくりを暴いただけでもすごいと思います」

「麻耶は頑張ったよ。初戦敗退は悔しいけれど、私たちが麻耶たちの分もがんばるから」

「うん……うん……」


 麻耶、フェルン、ナンシーはお互いに抱きしめ合い、その他所でDブロック三回戦が始まろうとしていた。

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