表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
普通の学園生活って何ですか?  作者: 有木千夏
第三章 『学園間交流戦』
46/90

岸波斑鳩女子学園

『サッ、サッ、サッ』

「……ふぅ、今日も平和だな」


 海が見える綺麗な石道に広がる落ち葉を掃除するのは、学園長である岸波雄山の務めだ。

 雄山は笑みを浮かべて目を閉じながら考え込む。


 この学園の朝はとても気持ちが良い。

 ……いや、他の学園がダメって言っているわけじゃないんだ。

 住み慣れているからか、ここ意外だとどうも落ち着かないんだよね。

 魔闘大会の時はあまり眠れないし。


「あ、おはよう皆」

「「「おはようございます、岸波学園長」」」


 生徒たちは雄山に向かって朝の挨拶をする。


 礼儀正しく元気な生徒を見ていると僕も元気が出てくる。

 歳をとったからだろうか、若い子を見ていると応援したくなるんだよな。


「岸波学園長、おはようございます」

「斑鳩君、おはよう。どうしたんだい、こんな朝早くに?」


 肩上まで伸ばした銀髪に白スーツ姿のこの人は斑鳩(いかるが)ひつぎ。この岸波斑鳩女学園の二人目の学園長だ。

 最初は雄山一人だけで学園長をやっていたが、女子学園の維持には女性の学園長が必要という事になって、当時副学園長だったひつぎと権限的な問題で地位を入れ替えようと提案した。

 だが、ひつぎが雄山は学園長のままの方が良いと聞かないので、定期的に開かれる学園長会議で他学園の学園長たちに相談して許可をとり、特別に学園長を二人にしてもらった。

 ひつぎは軽く一礼をして青い手帳を見ながら話し出す。


「はい、本日の(セント)ヴァルナ・ノワール学園との交流戦についてお話があります」

「あぁ、何かな?」

「本日、午前十時到着予定の(セント)ヴァルナ・ノワール学園の方々ですが、正午過ぎ頃に到着すると連絡がありました」

「そうか、わかったよ。なら、貝塚君たちには僕から……」

「既に伝達済みです」

「あ、そうなの? ありがとう」


 ひつぎは食い気味に言うと、雄山は少し考えた。


「何か遅れる理由とかは聞いているかい?」

「はい、ヴァルナ・レイシス学園長が昨日書類の山を相手にしたせいで寝坊した、と篠原様よりお聞きしております」

「あー、確かに能力の暴走と施設破壊に竜契約、さらにダブルクロス疑惑が一日に起きたらそうなるよね。ヴァルナ君も大変だ……」


 魔法協会からの情報と会議の情報を照らし合わせながら同じ状況を想像してしまい顔を引きつらせた。

 あぁ、そうだと言って、雄山は手に持った(ほうき)と落ち葉の入ったビニール袋を足元に置き、(そで)から携帯を取り出し宿舎に連絡をする。


「もしもし、僕だけど。今日、(セント)ヴァルナ学園の到着が遅れるって報告があってね、十二時過ぎくらいに着くみたいだから交流戦は明日から行う。だから、やっぱり追加で一日分泊まれるように食材の用意をお願いできるかな?」

『承知致しました』


 携帯の向こうから聞こえる女性の声を確認してから電話を切ると、足元に置いた箒とビニール袋を両手に持ち正面にいるひつぎに歩きながら話す。


「後で僕の部屋まで来てくれるかな、今日の予定について話しがしたい」

「わかりました。念のため宿舎を確認してから向かいます」

「うん、よろしく頼むよ」


 一礼をしてから宿舎の方に向かうと、雄山は校舎裏の広場に落ち葉を持って行く。

 広場の近くまで行くと灰色の煙が上がっており、焼き芋の良い匂いが(ただよ)ってくる。

 紅葉のように黄色と濃いオレンジのグラデーションがかかった長髪の生徒は、少しの落ち葉に埋もれたアルミホイルに巻かれている芋を座りながら見つめている。

 雄山は驚かせないようにあえて音をたてながらその生徒に話しかけた。


「おはよう、貝塚君。落ち葉持ってきたよ」

「岸波学園長、おはようございます。いつも落ち葉を持ってきていただきありがとうございます」


 今回、(セント)ヴァルナ・ノワール学園の案内役をお願いしている貝塚(かいづか)紅葉(もみじ)だ。

 紅葉は雄山に気がつくと立ち上がり挨拶をする。

 左手に持っている落ち葉の入ったビニール袋を渡すと、焼き芋が隠れるように落ち葉を被せた。

 落ち葉をかぶせてしばらくすると、煙がより強くなり焼き芋の甘い匂いも強くなる。

 雄山も紅葉も焼き芋が焼けるまでじっと煙を出す落ち葉を見つめながら、


「岸波学園長もお食べになりますか?」

「うん、いただこうかな」


 そう言うと、右手に持った木の棒を落ち葉に刺し焼き芋を外に出す。

 全部で3つ焼いていたみたいで、紅葉は慣れた手つきでアルミホイルを剥くと、自分の鞄から新聞紙を出しやけどしないようにアルミホイルに巻き付けて渡した。


「はい、どうぞ」

「ありがとう」


 紅葉もアルミホイルを剥いて新聞紙で包むと美味しそうに食べ始める。

 雄山も紅葉と一緒に焼き芋を食べながら今日の事について話をする。


「今日のことだけれど……」

「はい、斑鳩学園長から既にお聞きいたしました」

「うん。それでなんだけれど、今日は予定を変更して(セント)ヴァルナ学園の皆に対してこの学園の案内をしてほしいんだ。時間が余るようなら夜まで遊んでいても構わないよ。疲れているようなら早めに切り上げて宿舎へ案内しても良い」

「承知致しました。あとこれを……斑鳩学園長に渡していただけると」


 紅葉は焼き芋を食べ終わると、小さなビニール袋に新聞紙で包んだ焼き芋を入れて雄山に渡す。


「ありがとう、後で渡しておくよ」


 焼き芋を受け取ると紅葉は一礼をして校舎に向かって歩き出す。

 焼けた落ち葉を再度箒でビニール袋に集めて校舎の焼却炉(しょうきゃくろ)に向かう途中、紅葉の隙間に映る青空を見ながら呟いた。


「……七竜王(セブンスドラゴン)の力、か。会うのが楽しみだな、そうは思わないかいニヴィン?」

『……』


 海から強い潮風が吹いてくると、雄山は足を止めることなく焼却炉へ向かいそのまま校舎へ戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ