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普通の学園生活って何ですか?  作者: 有木千夏
第三章 『学園間交流戦』
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寝不足の学園長

 月曜日に行った特別演習から三日後の木曜日、二回目の特別演習を終えるとレイシスから生徒がクラスに集められた。


「皆、突然のことで悪いが来週の月曜日から岸波斑鳩女子学園との交流会をする。一週間程度は滞在する予定だから、各自着替えなどの準備を土日にしておいてくれ。朝7時に校舎前広場に集合だ」


 と言われ、次の月曜日。


「「「……遅い」」」


 天羽たちは口をそろえてそう言った。

 集合時間の7時より既に30分は経過している。


「言い出しっぺの本人はどこだよまったく……」

「さっきからうるさいわね、大人しく待っていなさいよ」


 地べたに座りながら愚痴(ぐち)を漏らす天羽に、白いスーツケースの上に座っている麻耶がため息混じりに言う。

 しかし寝不足なのか目の下には薄いクマが出来ており、疲れたようにまたため息をついた。


「麻耶大丈夫? ちゃんと寝ないとダメだよ」

「なるが夜中まで『女子学園楽しみだなー!』って騒いでいたからでしょうが!」

「あはは、そうだったそうだった!」

「あんたねぇ……」

「うるさいぞ、少しは静かにしろ」

「俺も女子学園楽しみだなぁ。女子だけの学園、あわよくば誰かを俺の彼女に……」

「お前は黙っていろ」

「はい、すみません」


 腕を組んで同じくスーツケースに座っている優斗が敏文を睨んで黙らせると、寮の方からスーツケースを引っ張ってくる二人組がこちらに走ってくる。


「ごめんなさい、遅れました」

「グッドモーニング、皆サン!」


 30分の大遅刻をしたうえで元気に挨拶できるのは才能なのかもしれない、とナンシーを見て天羽は思う。

 対して、瑠璃子は荒くなった息を整えると周りを見渡し独り言のように質問する。


「おいて行かれた覚悟をしていたのですが、学園長はどこに?」

「まだ来ていないよ。俺たちも30分以上ここで待たされて流石に疲れ始めてきたところだ」

「そうですか。置いて行かれなかったことに一安心ですが、学園長が集合時間に遅れるのは少し気になりますね」

「ルリちゃんごめんね、私のせいで遅れちゃって」

「いえ、大丈夫みたいですよ。学園長がまだ見えていないようですので」

「あれ、本当だ、いないね。学園長どこデスカー!」

「またうるさいのが増えたか……」


 集合地点辺りを大声出しながら見渡すナンシーに、優斗も麻耶と同じように顔色が悪くなっていた。


「集合時間に遅れるなんて、バッカみたい」

「まぁまぁ、学園長も来ていないし良いじゃないか」


 機嫌を悪くしている朱里に、竜二は両手を上下に動かし(しず)めようとする。


「皆で出かけるのは楽しいな!」

「うふふ、まだ出発していませんわ」


 紅花とエレーナは皆と比べて疲れを一切見せずに二人で楽しそうに話していた。

 いったいいつまで待たせれば気が済むのかと思っていると、レイシスの様子を見に行っていたフェルンが校舎から携帯を片手に天羽たちの前に出てきた。


「お待たせしました。レイシス……学園長から話があるそうです」


 そう言って携帯の画面を天羽たちの方に向けると、ひどく擦れた声でレイシスの声が聞こえた。


『あーあー、聞こえるかな……? おはよう皆、学園長のヴァルナ・レイシスだ。すまないね、色々と仕事があったせいで寝坊してしまった。私の勝手ですまないが、出発時刻を10時に変更する。それまでメイドの指示に従ってくれ、たま、え……』

『ガタンッ、ツー、ツー』


 携帯が落ちるような音と共に電話が切れる。

 予想していた展開に落胆の表情を浮かべると、フェルンの後ろから咲がやってきて静まり返った皆に対し挨拶をする。


「皆様おはようございます。学園専属メイドの篠原(しのはら)(さき)と申します。本日は学園長ヴァルナ・レイシスの失態により、皆様にご迷惑をおかけ致しましたことを、学園長に代わり私からお詫び申し上げます。本日、皆様にお乗りいただく『学園間移動用地下鉄道コム・シュネル号』は既に出発可能状態となっておりますので、学園長到着までご乗車になりましてお待ちください。列車まではフェティーが案内致します」


 咲は一礼をして校舎へ入っていくと、フェティーが入れ替わりで出てきて同じく皆に一礼をする。


「学園専属メイドのフェティーです。皆さまを列車までご案内させていただきます。荷物をお持ちになりましてこちらにお越しください」


 そう言うとフェティーは校舎の中へ入っていき、エレベーター横の黒い箱に鍵を挿しスイッチを押した。

 エレベーターがすぐにやってきて皆が乗り込むと、真下に落ちるように急降下していく。


「到着しました。『(セント)ヴァルナ・ノワール学園地下発着駅』でございます」


 ドアが開くとそこには貨物列車のような黒と黄色のラインが入った先頭車両に、白い寝台列車のような客車が10両以上連結された列車が目の前に現れた。

 よく見ると先頭車両には『Com(コム) Schnell(シュネル)』と白字で書かれていたため、これが咲が言っていたコム・シュネル号だと理解する。


「こちらの客車に各2名ずつ同じ寮室の方がお乗りになってお待ちください」


 フェティーがそう言うと客車のドアが一斉に開き天羽たちを歓迎しているかのようだった。

 見てわかる列車の豪華さに天羽たちはお互いの顔を見ながらも同室の人と一緒に客車に乗り込む。

 客車にはドアが車両横先頭車側に一つしかなく、天羽とフェルンは『quatre(キャトル)』と書かれた客車に乗り込んだ。


「おお、すごいな……」


 客車に入るとまず玄関のような靴置き場と青いスリッパが二足用意されていた。

 そこから車内のドアを開けると最初に目に飛び込んだのは大きなダブルベッドだ。それこそ、どうやって客車に入れたんだと疑問に思うくらい大きい。

 他には大型テレビ、クローゼット、トイレ、キッチン等々、ここまで充実させてこの学園は何がしたいのかと天羽は軽く混乱する。


「お、おお! すごいですよ、天羽さん!」

「まぁ、落ち着けってフェルン」


 フェルンは初めて遊園地に来た子供のようにはしゃいでいる。


 とりあえず、岸波斑鳩女子学園に着くまでは何も不自由はなさそうだな。


「……暇だし眠るか」


 と、天羽は持ってきたスーツケースをドア横に置き、はしゃぐフェルンを見ながらベッドに身を任せ二度寝をした。

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