魔素《エナ》
玄徳はモニターの中央に立つなり、人差し指を鳴子に向けて指名する。
「まずは、斎藤。お前は何の能力者だ?」
「えっ!? わ、私ですか?」
鳴子は自分を指しながら驚いていると、玄徳は明らかに機嫌を悪くしながら、
「俺に二度も言わせるつもりか?」
「はいっ! 能力は性能強化です! 自分の能力を限界以上に上げられる能力です!」
「よろしい」
体をバネのように飛び上がらせて立ち上がり、慌てながら説明をした。
あの殺意にも似た視線は、生命の危機を感じるほどだった。
蒼葉から能力の使用条件について教えてもらっているが、天羽が即時使えるような能力の持ち主であれば迷わずに使っていただろう。
玄徳は再び人差し指を立てた右手を振り下ろすと、天羽の目線にちょうど人差し指の先が映る。
「麗城、お前は?」
「はいっ! 能力は記憶奪取です! 他人の記憶から他人の能力が使えるというよくわからない能力でして……」
「自分で自分の能力がわからないのか?」
「申し訳ございません……」
「……新入生らしい回答だ。よろしい」
「……あ、はい」
機嫌を損ねたのかと一瞬心臓が止まりかけたが、安堵して椅子に重く腰を掛ける。
玄徳は中央に移動させられた教卓に両手をつきながら話を続ける。
「このように、新入生は自分の能力をまだ理解しきれていないことが多い。我々はそんなお前たちのために最低限自分の能力は自分でわかるくらいまで育ててやる」
そう言うと、教卓の中からタッチパネルを取り出して画面を弾く。
すると、モニターには画面いっぱいの文章と画像や図が表示され、玄徳は真剣な顔つきで続ける。
「まず、能力を発動するためには魔素というもの必要になる。魔素は自分の生命力を源としており、年齢が若ければ若いほど多い傾向にある」
指さす山のような形になっている図と文章をまとめながら、皆は一生懸命ノートを取っている。
ノートを取らない人がいれば首根っこを掴まれて廊下に投げられかねない。
さすがの天羽でもそれくらいは分かったので、不本意だがノートを取ることにした。
「魔素の量が多ければ能力が強力なものになるかと言えばそうとは限らない。能力の特性や使い方、魔素の量等が合わさって決まるものだ。今から自分の能力は弱いから使えないと思う必要はない、正しい知識をつけたり体を鍛える等の努力をすれば必ず役に立つ状況がお前らの人生の中で現れる。くれぐれも間違った使い方をするなよ、わかったか!」
「「「はい!」」」
軍隊の号令のようにまとまった返事をすると、玄徳は皆を見ながら首を縦に振りさらに話を続け、
「この後、お前らには隣に座っている奴と模擬戦をしてもらう。もちろんその場には俺と学園長、加えて医師のリリエル先生も同席する。今後個人に合った能力向上を図るためにも、実戦で確認した方が分かりやすいからな。試合のルールは後で教える、座学を続けるぞ」
玄徳はさらにタブレットを弾いて画面を切り替える。
さっきとあまり変わらないような画面、それよりも字が小さくて読みづらい。
もう少し大きく表示してほしいものだが、言ったところでそんな希望が叶うわけがなく話が続けられる。
「能力には魔法陣を使う詠唱型と非詠唱型、魔法陣すら出さずに能力を使用する無陣型がある。詠唱型は思念を言葉に表すことで魔法陣を形成し能力を発動する。対して非詠唱型は思念をそのまま魔法陣として形成し能力を発動する。例えば、物体を作り出す形成系能力者は、言葉に表し詠唱することでその通りの物体が形成されるが、思念だと具体的な形を想像しなくては作り出すことが出来ない。これは無陣型も同様だ。しかし、形さえ精細に想像出来れば思い通りの物を作ることが出来る。発動方法が違えどそれぞれ利点と欠点があることは忘れるな」
「望月教官、質問があります」
「何だ?」
瑠璃子は手を挙げ望月教官を怖がること無く立ち上がり質問する。
「詠唱型の能力者でも非詠唱で能力を発動、逆に非詠唱型の能力者でも詠唱し能力を発動することは可能なのでしょうか?」
「前者の非詠唱で能力を発動する者は数人しか知らないが、訓練の出来と自分の能力の研究次第では可能だ」
「ありがとうございます」
玄徳が頷くのを確認して瑠璃子は座った。
体も声も震わせずに会話が出来るあたり、瑠璃子はこの手の人を相手にすることに慣れているのだろうか?
「先ほど少し言ったが、能力は大きく6つに分類されている。
物体の形成を主とする形成系能力者。
生物や武器等の召喚を主とする召喚系能力者。
身体強化、弱体化を主とする支援系能力者。
物理、魔法攻撃を主とする攻撃系能力者。
物理、魔法防御を主とする防御系能力者。
以上のどれにも当てはまらない特異系能力者。
最初に聞いた斎藤は支援系能力者だ。麗城はどれにも当てはまらない特異系能力者。細かく分けるときりがない、今は自分がどれに分類されるかだけ知っておけばいい」
能力分類特異系能力者、悪くない響きだがそれ故に謎が多い能力って感じもするな。
実際、俺の能力は謎が多いが。
でも、能力を分類分けして何になるのだろうか?
特に意味があるようには思えないし……研究テーマを整理するのにやりやすいっていう理由だろうか?
玄徳はタブレットを弾いて頷くと、レイシスを見て再度頷く。
「少し早いが、以上で座学を終了する。次は10分の休憩を挟んで模擬戦だ。教室に集合した後地下に移動する」
「地下への案内は私たちがするから、勝手に行かないように。以上、各自休憩に入ってくれ」
「「「はい」」」
そうして、座学が終了し各々休憩を取るのだった。




